南アフリカ旅日記 〜day7 Kirstenbosch〜

<6月28日>
 全行程11泊14日だから、この日が終わればちょうど折り返しである。
 前回のドイツと比べても、あっという間の時間の過ぎ去り方。デンマーク戦前後を除けばとにかくムリをせずにいったので、疲れも不思議なくらい感じていなかった。
 だから折り返しを目前にしたこの日は、一日中どこかさみしかった。
 
 ところで日本出発前は、ケープタウンでレンタカーを借りて移動すると言うと、たいていは「大丈夫なの?」と心配された。
 でも実際のところ、現状の南アではレンタカーが安全なのである。路線バスやローカルの鉄道といった公共交通機関のほうがはるかに危ない。南アを知る人たちはみな、そうした公共交通機関は使わないのがベストだと口をそろえて言っていた。
 その点レンタカーなら、危ない地域にフラフラ入っていかなければまず問題ない。暗い時間でも大きな道なら大丈夫だろうと思う。出発前には赤信号では止まるなと書いてある記事もネットで見たが、その必要性は感じなかったし、赤信号を無視する現地の車も一台も見なかった。ヨハネスブルク近郊はわからないけれど、ケープタウンならまあそんな感じだった。
南ア国旗・レインボーフラッグ 車の話でいうと、ケープタウン周辺では南アフリカの国旗、いわゆるレインボーフラッグの小旗を付けて走る車が本当に多かった。もちろん各国のサポーターはそれぞれの国旗を付けて走るのだけれど(日の丸を付けた車は見当たらなかったが)、その数は全体からすればひどく少なく、南アの旗を掲げる車が圧倒的に多いように感じた。
 地元だから当たり前? でも、2002年の日本ではこんなことはなかったし、ドイツでさえこれほどまでではなかったと記憶している。これも南アの人たちのホスピタリティー(もてなし、歓迎の気持ち)のひとつなのだろうか。あるいはアフリカ初のW杯を自国で開催していることへの誇りだろうか。
 
 この日も朝早く起き、GrandWestのWimpyで卵・ベーコン・豆・トーストのイングリッシュブレックファーストを平らげたあと、午前からレンタカーに乗って動き出した。この日の目的地は、6月29日の日記でも書いた世界遺産の植物園「キルステンボッシュ(カーステンボッシュ)国立植物園」である。
 現時点で、南アフリカには8つの世界遺産がある。うち文化遺産が4つで、自然遺産が3つ、文化と自然の融合した複合遺産が1つだ。文化遺産の代表はなんといっても「ロベン島」だろう。一方、2日前に訪れた喜望峰や前日のテーブルマウンテンを含むケープ半島一帯の植生が「ケープ植物区保護地域群」として自然遺産登録されている。キルステンボッシュ植物園も、この「ケープ植物区保護地域群」に含まれている。世界遺産になっている植物園は、世界でもここひとつだけだ。
 キルステンボッシュ植物園のゲート
 キルステンボッシュ植物園のメインゲート
 南アフリカ原産種が満ち溢れたこの植物園は、世界最古の植物園としても知られている。むこっちの職場の知り合いにもここを訪れるためにケープタウンへきた人がいるそうで、植物好きにはたまらないスポットでもある。
キルステンボッシュ植物園 朝食をしっかりとった後だから、ホテルを出たのはいつもより遅い時間だった。植物園はケープタウンの市街地からすぐのところ、テーブルマウンテンの麓にある。この辺りへやってくるのももう4度目で、すっかり慣れたものである。
 周囲は気持ちのいい高級住宅地の雰囲気で、ケープタウン大学も間近にある。とにかく緑が多く、昼間のうちは危ない感じはまったくなかった。植物園に到着したのは午前10時すぎか。天気は前日に引き続いてすばらしい晴れ。冬とはいえ、晴れた日の陽射しはかなり強く、半袖シャツ一枚で十分なほどだった。
キルステンボッシュ植物園 園内に入ると、まず目に付いたのがネルソン・マンデラの像。6月29日の日記に写真を載せたが、この像はマンデラというより北島三郎にそっくりだった。
 プロテアやエリカの美しい花々、多数の種類のシダ植物、アロエ……緑の中に張り巡らされた気持ちのよい道は、気楽な散歩に最高だった。ただ至るところに勾配があり、強い陽射しと相まってやたらと汗をかく。園の奥のほうは勾配がそのままテーブルマウンテンの山塊につながるトレイルになっていた。最初そのひとつの道を歩き始めたが、上りがだんだんと険しくなってきたので引き返す。あとで地図を確認すると、その道はやっぱり山の上まで延びていた。途中で戻ってほんとうによかった(笑)。
 
 
 
キルステンボッシュ園内のコーヒーハウス 園内散策の後は、どこかの山荘を思わせるコーヒーハウスで店自慢のホットチョコレートの休息。ここにのんびり座っていると、自分がアフリカにいるとは思えなかった。ケープタウンの街中だって、ヨーロピアンナイズドされたモダンな近代都市だ。
 でも考えてみれば、僕らが“アフリカ”に抱いているイメージというのはいったい何なのだろう。野生動物? 貧困? 乾燥した大地? 伝染病?……んー、よくわからない。アフリカにだっていろんな場所がある。そんな当たり前のことが、いまさら頭に浮かんだりもした。
 
GrandWestで回転寿司 午後、GrandWestに戻る。遅めのランチは中華のバイキング。夜は回転寿司にした。どちらもGrandWestの中にあるレストランである。
 回転寿司は、ネタはマグロとサーモンとウナギとカマボコだけで、あとはそれらにアボカドがのったり、マヨネーズがのったりのアレンジ程度。まあバリエーションは少なかった。ただ昼の中華バイキングで食べすぎてたから、軽めの夕食にはちょうどいい。
 ビールのあと、例によって南アの赤ワインで乾杯。ひとつ、いなり寿司にマヨネーズがかかっているのがあった。これが案外うまい。日本に帰って自分でもやってみようと思った。
 マヨネーズがかかったいなり寿司
 マヨネーズがかかったいなり寿司。案外いけた
 そうそう、GrandWestは英語だから、GrandとWestの間に半角スペースが空くのでは?という疑問が当然湧くにちがいない。でも不思議なことに、ここの綴りは普通は間が空かないらしい。なんでだろう、よくわからない。
 
 きょうはおまけに、携帯電話やネット環境をどうしたかについても書いておこう。
 まず、City Lodge GrandWest Hotelは普通に無線LANが使えた。ただフリーではなかったので、地元の通信会社で12時間260ランド(約3100円)の通信権をオンライン決済してつないだ。こまめに切っていれば案外使わないもので、これ、最終的に1時間半くらい余らしてしまった。まあ、その下の料金は5時間130ランドだったから、べつに損でもなかったろう。
 続いて携帯電話。南アの携帯電話はGSM対応だけれど、僕の使っているauの機種がグローバルパスポートでCDMAGSMも使えるので、そのまま持ってきた。ちなみに料金は、南ア国内の通話が1分80円、日本へかけると1分180円。海外だから着信でも1分160円かかる。Cメールは受信が無料で、送信は1通100円。Eメールは50パケットまでが1通50円だった。ネットのほうは調べなかったので料金不明。帰国してチェックすると、滞在期間の総通話料・通信料はおよそ1万円。けっこう使ったことを思えば、たいして高くはなかった。何よりCメール受信無料がありがたい。(day8へ続く)
 
 (15:31)