南アフリカ旅日記 〜day6 Table Mountain〜

<6月27日>
 6日目も早起き。南アフリカでは到着当日のハードスケジュール(デンマーク戦)を除き、総じて健康的な生活サイクルだった。夜のゲームが終わる時間には眠りにつき、だいたい毎日5時とか6時には起きていたし。……単に年取っただけかもしれないが。
 再三書いているように、とっきーはこの日午後に発つ便で帰国してしまう。離陸ほぼ2時間前の午前11時までには空港に送るとして、その前になんとしてもテーブルマウンテン観光を組み入れたかったので、必然的に行動開始も早くなった。とっきーがどこかから持ってきた情報では、テーブルマウンテンに登るロープウェイは朝8時から動いているとのこと(実際にはちがったのだが)。ならばその始発便に乗ってしまえば、テーブルマウンテンの上でも時間に余裕をもって楽しめるという計画である。
 GrandWestから市街地までは車で20分程度。そこから10分くらい走れば、標高300m付近に位置するロープウェイ乗り場に着く。僕らは7時ちょっとすぎにホテルを出た。もちろん、まだ暗い。7時40分頃には、僕らはもう乗り場に到着。駐車スペースはガラガラで、ロープウェイを待っている観光客の姿もまばらだった。
 8時の始発に向けて僕らは並び始めたが、すぐに衝撃的(?)な事実が明らかになる。ロープウェイ、冬季の始発は8時ではなく8時半だというのだ。そう、南半球の南アはいま冬の真っ只中。とっきーの情報がまちがっていたわけだけれど……まあそれはいい。どちらにせよこの早出が、実はふたつの面で功を奏することになった。
 ひとつは、混雑回避。8時を回る頃には観光客がどんどんとやってきて、駐車スペースはすぐいっぱいになった。早くやってきて大正解だったのである。
ケープタウンの日の出 そしてもうひとつが、日の出だ。ロープウェイ乗り場からのケープタウン市街の眺めもすばらしいのだが、ちょうど8時頃、その街並みの向こうにまばゆい太陽が昇ってきた。少しずつ、少しずつ、ダウンタウンの高層ビルに朱のラインが投じられていく。振り返ればテーブルマウンテンの岩肌も、朝の光に赤らみ始めた。その美しさといったら……この光景に接するためだけにも、冬のこの時間にこの場へやってくる意味があると思えるほどだった。
 暁のケープタウン市街
 暁に輝き始めるケープタウン市街
 赤く染まるテーブルマウンテン
 テーブルマウンテンも赤く染まりだす
 夜明けのライオンヘッド
 ライオンヘッドも夜明けの光に真っ赤
 ロープウェイ乗り場では、もうひとつ偶然の収穫があった。僕らは到着が早かったので、最初は前から3番目に並んでいた。ところが途中で、列を作る場所がそこでないことが判明。急いで列の後ろに並びなおしたのだが、そのときたまたま前にいたのが日本人の男性だった。しかもその男性、僕らと同じツールアフリカの被害者だったのだ。当然話ははずみ、テーブルマウンテンの上に行ってからも続いた。
 仙台でカメラマンをしているという彼は、僕ら3人の記念写真も撮ってくれた。「帰ったら、(被害金の返還訴訟を)がんばりましょう!」と、彼は別れ際に言った。今後、またどこかで会う機会があるかもしれない。
 
360度パノラマのロープウェイ 話をロープウェイに戻そう。このロープウェイは、中腹から山頂まで800mに及ばんとする高低差をたった5分で一気に登っていく。おもしろいのは内部がターンテーブル構造になっていることで、ロープウェイ内では一ヵ所に立っていても360度のパノラマを見渡せる点だ。
 そのパノラマが、またすばらしい。一方を見れば曙光に輝くケープタウンの街並み、もう一方はテーブルマウンテンの垂直に切り立つ岩肌。この山は歩きで登ることもでき、頂上めざして健脚に恃む人たちの姿も拝めた。
テーブルマウンテンの山頂駅 そして、文字どおり絶壁の頂に張り出したような山頂駅(右)に到着する。天空の世界から下界を見下ろした気分の僕らは、そのあまりの迫力に息を呑んだ。雲がかかり登れない日も多いというこの山。たしかに前日、喜望峰へ向かう途中に見たときも、頂上は雲に覆われていた。
 ところがこの日は“とてつもない”と形容できるほどの絶頂晴れ。空気の透明度もすばらしく、ケープタウンの市街地やV&Aウォーターフロント、W杯会場のグリーンポイント・スタジアムと、その前の海に浮かぶアパルトヘイトの負の象徴・ロベン島はもちろんのこと、ケープタウンを望むはるか向こうの山並み、その手前に広がる大地、大西洋の大海原、振り返るとケープ半島を俯瞰して、きのう訪れた町々や海岸線、遠くケープポイントまでをも余裕で視界に収めることができた。
 テーブルマウンテンの頂上は、その名のとおり平らになっている。僕らは歩き回って四方のパノラマを堪能し、ケープタウンの街を背景に記念写真も撮りまくって、10時頃にふたたびロープウェイに乗った。下りてくると、駐車を待つ車がズラリと並んでいる。やはり早起きは三文以上の得だった。しかも感動的な晴天に恵まれ、僕とむこっちにとっては旅の前半のハイライトになったし、まもなくアフリカの大地を飛び立つとっきーにとってもきっと鮮明な想い出になったことと思う。
 予定どおり11時頃、とっきーを無事に空港へ送り届け、お別れ。急きょ参加を決めてくれて旅の前半が3人のパーティーになり、短かったけど充実した時間だった。ありがとさん。
 GrandWestに戻ってきたむこっちと僕は、まず昼飯。フードコートでタイ料理を食った。ひさびさのアジアの味がうれしく、やっぱりアジア人だなと自覚。この日の午後はカジノに行ったり、夕方からは決勝トーナメントをテレビ観戦したりして、ふたたびゆったりと過ごした。
 僕とむこっちの旅は、まだ半分も終わっていなかった。(day7へ続く)
 
 遠くにケープポイント
 南側を遠望。中央いちばん奥がケープポイント
 ロベン島
 世界遺産・ロベン島。僕らも6日後に訪れた
 テーブルマウンテン中腹側の駅
 ロープウェイの出発点となる標高300mの駅をはるか下方(中央)に見る
 3人で記念写真
 最後に、むこっち(右)と僕(中央)ととっきー(左)の3人で記念撮影……でも公開できるのはシャドウバージョンのみであしからず
 (その他、6月28日の日記に載せた写真も参照のこと)
 
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