南アフリカ旅日記 〜day1 for Macau〜

<6月22日>
 いよいよ出発の日がやってきた。
 さすがに2週間日本を空けるとあって、出発直前はいろいろ仕事が立て込んでいた。直前に仕上げたのは、生物多様性に関する原稿。要は貴重な生物種を守ろうというお話だが、これから向かうアフリカの地でその多様な生物を目撃できるのかと思うと、これはワクワクせずにはいられなかった。
 そして、この1日目……だけれど、その前にday0の延長として、出発直前に起きた2つの意外な出来事を軽く書くことから始めよう。
 まず、出発の1ヵ月とちょっと前、とっきーが急きょ参加を決めた。24日のオランダ・カメルーン戦のチケットが1枚余っていたから「どう?」と煽ってみたのだけど、彼はしばらく悩んだ末、
「アフリカに行く機会なんてそうそうあるもんじゃないから」
 と渡航を決意した。ステキな決断だと思った。彼は仕事の都合もあり僕らと同じ2週間は厳しいということで、3泊6日の“準弾丸”な行程。でも、南アにはどうしても治安に対する不安があるから、ひとりでも多く行動を共にできるのは、みんなにとってありがたいことだった。
 もうひとつの意外な出来事。それは日本代表の活躍である。ご存じのとおりグループリーグの初戦は本田のゴールで勝ち、2戦目のオランダ戦も引き分けになっておかしくないほどの善戦を見せた。
 実はこのオランダ戦の晩、とっきーはRW夫妻とともにうちにやってきていた。酒を呑みながらワイワイガヤガヤ、オーマイゴーって感じでみんなで見ていたんだが、試合後、ひとつの可能性が頭に浮かんだ。
「これは、3戦目のデンマーク戦を見にいくのもアリかもしれない」
 前回のドイツで、僕は日本戦を1試合も見ていない。今回も当初の予定では、日本戦のことは考えていなかった。べつに背を向けているわけじゃない。理由は要するに、負けるのを見るのはイヤだからだ。そこにオランダ戦の、先を大いに期待させる内容。とっきーに聞いたら、彼もデンマーク戦を見たいという。さっそくむこっちにも意向を確認し、彼もOKというので、直前で方針を転換することにした。
 南ア到着当日にケープタウンで見るはずだったオランダ・カメルーン戦をキャンセルし、ルステンブルクラステンバーグ)に向かって、現地でデンマーク戦のチケットを調達する計画。移動にもかなりムリのある行程だったのだけど、動き出した気持ちは収まらなかった。べつにもともと、日本戦を見たくないわけじゃない。強ければ、見たい。僕の場合、そういうことである。むこっちも同様の想いを持っている。
 
 デンマーク戦の話は、またday3のところで書くことにしよう。ともかくそんなわけで、2つの意外な出来事を経て、6月22日朝、僕は家を発った。むこっちとはマカオまで別行動で、ホテルで合流する計画。
 まず香港往復は、たまっているJALマイレージを利用した。午前9時55分のフライトだから、2時間前には成田に着こうと思うと、必然的に早朝5時台の出発。うれしいことに、うちの奥さんが成田まで見送りにきてくれた。エアポート成田のグリーン車で、ちょっとした旅気分である。羽田にならちょちょいと行けるうちの辺りでも、成田はほんと遠い。
 9時ちょっと前、出発ゲートをくぐった。奥さんは僕を見送ったあと、成田で少しのんびりして、実家の木更津に向かった。2週間置き去りにする旦那を許しておくれ。でも「また4年後も(ブラジル行きで)置いていくんでしょ」と、いわれた。
 僕はいちおうJALのサービスステイタスを持っているので、搭乗の際は並ぶことなく優先レーンから乗ることができた。こういうのも、うれしい。
 4時間半のフライトで、現地時間午後1時半頃に香港国際空港へ到着。香港からマカオへの行き方は大きく分けて2種類あって、ひとつは香港に入国してから船で向かう方法、もうひとつは香港に入国せずに隣接するターミナルから直接船で向かう方法だ。香港で遊んでから行くなら当然前者なのだけど、今回僕は香港はどうでもよかったので(競馬も開催してなかったし)、空港から一度も外へ出ず、香港の入国手続きもせずに、そのままマカオ行きターボジェットに乗船した。
香港からマカオに向かうターボジェット ちなみに、日本からマカオへこのルートで直接向かうならば、成田で預けた荷物をそのままマカオまで持っていってもらうことができる。香港で一度荷物を受けださなくていいので、これはなかなかありがたい。
 船は午後3時に空港脇の港を出航。45分ほどでマカオに到着……なのだが、出発が15分遅れたため、着いたのは午後4時だった。マカオの入国手続きを済ませ(けっこう並んだ)、港からホテルのシャトルに乗り、チェックインして、すぐベッドに横になる。前日2時間しか寝ていなかったし、むこっちの到着まではまだだいぶ時間があるから、まずはグッスリ寝ようと思った。
 むこっちは夕刻成田を出るデルタの便で香港まで飛び、夜の10時すぎに香港到着の予定。この時間では空港からマカオに直接向かうターボジェットの最終便に間に合わないので、彼は香港へいったん入国して、香港島のフェリーターミナルからマカオにやってくる。明けて6月23日の午前1時くらいにはホテルに着くはずだった……が、マカオで安らいでいる僕の携帯にむこっちからのメールが届いた。
「デルタの出発が4時間遅れて、マカオに着くのは朝の5時頃になります……」
 なんだかいきなり波乱っぽいスタートになったのだった。(day2へ続く)
 
 (17:38)