ついに達成

 メジャー新の9年連続200安打、ついに達成。
 来年で10年連続、その次で11年連続、さらにその次、さらにさらにその次……と、この大記録を伸ばしていっておくれ。もちろんその先にはメジャー3000安打があるし、ピート・ローズの4256本がある。
 おっとその前に、今シーズンの首位打者があるか。現時点でトップのマウアーには1分ちょっとの差があるけれど、まったくもって不可能な数字じゃない。200本に到達したことで、これからはプレッシャーもなく怒涛の追い込みを図ってくれるんじゃないかと思う。足に不安は抱えるけれども、内野安打量産という彼のスタイルを貫いて、9年間で3回目となる首位打者をぜひ取ってほしい。
 
 日本で3割を4回達成し、最高175安打を放った岩村は、メジャーの2年でまだ3割に達していない。ことしは3割の可能性があるけれど、ケガの長期離脱があって残りをフル出場してもシーズンの半分未満。規定打席には遠く及ばないから参考外だろう。安打数も昨年の172本が最高だ。
 松井秀喜は、安打数こそ日本を上回るシーズンが多いが、打率はとくに上がっているわけではないし、なによりホームランも最高で31本とゴジラにしてはさびしい。アメリカに行って「日本と同等、あるいはそれ以上やれているか」というと、大いにクエスチョンが付く。
 日本では文句なしで強打者だった松井稼頭央や福留も、ご覧のとおり。アメリカに行ってからはまったくといっていいほどパッとしない。
 イチローは言った。「アメリカは試合数が多いので、200本を打つのは日本より楽だ」と。
 もちろんこれは、イチローだから言えること。彼以外の日本球界を代表するすばらしい打者たちの現状を見れば、アメリカでヒットを打ち、しかも何年もにわたって200本以上を打ち続けることがどれほどに大変なことか、容易に想像できるではないか。
 なにしろアメリカにだって、9年連続で200本を打った選手はいままで一人もいなかったのだから。
 たしかに試合数は日本より多いけれど(日本は現在144試合)、その162試合が日本とほぼ同じ長さの期間に詰め込まれている。日程的なハードさに加えて移動もハード。シアトルから東海岸までいったい何時間かかることか。僕も実際にシアトルからタンパベイまで飛行機で移動したことがあるが、あの広大な大陸を横断するというのはそうそうラクチンなことではない。
 おまけに時差がある。西海岸は大陸で時間がもっとも遅い(ニューヨークやボストンよりマイナス3時間)から、シアトルやカリフォルニアでナイトゲームを終わった後に東海岸へ移動すると、移動時間プラス3時間が経過している。だからもう余裕で朝だ。シアトルと同じ西地区のレンジャースの本拠地・テキサス州アーリントンにだって、先日シアトルからナイトゲーム後に移動したら、ホテル到着は朝の5時だったという。
 さらに、それに加えて日程がハードな分、雨が降っても2時間3時間は平気で待つし、雨で流れるとすぐダブルヘッダーになる。200安打を達成した今回のレンジャースとの連戦もダブルヘッダーだが、第1試合は雨がやむのを待って開始が4時間半遅れた。にもかかわらず、第1試合が終わったら30分程度のインターバルを挟んですぐに第2試合。しかも、夜8時から。
 こんなタフなスケジュールだから、ケガをせずにシーズンを乗り越えるだけでも大変なこと。岩村、両松井、上原、松坂……ことし離脱した選手は枚挙に暇がない。とにかくケガをしないイチローにしたって、今シーズンは初のDL(故障者リスト)入りを経験している。ここまで出場した試合数は、休みなしで出ている人より16試合も少ない。
 まあ、いまさら僕がイチローのすごさをいくら書いても、たいした意味はないだろう。「イチローがすごい」ことは、おそらく誰もが知っている。ただ、中には「知っているけど認めたくない」人がいるらしいので、そういう人向けに、ちょこっと書いてみただけの話。
 
 ともかく、9年連続200安打のメジャーリーグ新記録、しかも108年ぶりに塗り替えられたこの大記録に、最大級の拍手を送りたい。
 そして、さらに、来年も、その次も、その次も……。
 
 (11:24)