バレンタインの恋人

◆31年ぶりのゲーテの夢

 あしたからちょいと出かける関係で仕事が詰まっていて、この数日はほとんど外出せずに家ごもり。例によって夜中には美ら島へ行ってるけど、まあその程度だ。
 この間、スポーツの世界ではほんといろんな出来事があった。日曜の菊花賞ディープインパクトの無敗三冠達成はもちろんのこと、野球の世界では日本でもメジャーでもスイープ(全勝)でチャンピオンが決定*1。個人的にはボルトンの中田がプレミアリーグ初ゴールを挙げたのもトピックだった。
 そんな中、きのうの昼にホワイトソックスのワールドチャンピオンの話を書いたあと、なにげにロッテの日本一のことをまだ書いていなかったことに気づいた。なわけで、今回はロッテと、日本シリーズの話。
 
 ゲーテの「若きウェルテルの悩み」を読んだことがあるという人も、この時代の日本にはもはやほとんどいないのかもしれない。
 いまは知らないけれど、昔は新潮文庫の100冊にも入っていた。僕はまあ人並みに、高校の頃に一度読んではいるけれど、かのナポレオンや、ロッテの創業者・重光武雄のように何度も何度も繰り返し読んではいない。
 “ロッテ”の名前は、この「若きウェルテルの悩み」の主人公ウェルテルが恋した女性・シャルロッテに由来している。重光武雄シャルロッテに恋をし、社名に彼女の通称“ロッテ”をつけたというわけだ。ちなみにロッテの有名なキャッチコピー「お口の恋人」は、そのコピーから会社を思い浮かべる“企業名想起率”ランキング(日経ビジネス「コーポレート・メッセージ調査」)で4年連続1位を獲得しているそうだ。“ロッテ”と恋は、なにげに深い関係にある。考えてみれば“バレンタイン”も恋にゆかりがある名詞である。
 
 日本シリーズ第4戦は、それまで3戦の一方的な10点ゲームから一転し、1点を争う戦いとなった。凡ミスも目立ったので好ゲームという言い方が当てはまるかというと疑問もあるけれど、今シリーズで唯一の接戦であったことは間違いない。
 いろいろ言われている。間隔が空いた阪神は不利で、ロッテがはるかに有利だったと。
 たしかにそういう部分はあるけれど、単なる勢いにとどまらず、ことしのロッテが一年を通じて強かったことは確かだろう。それは交流戦の結果にも表れている。
 仕組みは、その仕組みの上で今シーズンを行おうと決めたことなのだから、ひとまずそのシーズンについてはあとから有利不利を言っても仕方がないし、後味が悪すぎる。課題は課題として、別の話。いまはロッテの31年ぶりの日本一を、素直に喜びたいと思う。
 

◆3位のプレーオフ進出はやっぱり……

 で、課題は課題として別の話なんだが、その課題をテーマとして鑑みると、いまの日本シリーズの仕組みに改善の必要があるのは誰の目にもわかる確かなことだ。
 セ・リーグプレーオフの導入を検討している。再来年からということのようだが、前倒しもありうるらしい。盛り上がるプレーオフはファンとしても楽しいし、絶対に必要だと思う。これを機会に、そのプレーオフのあり方を、パ、セ、ともにもう一度考え直してほしい。
 ソフトバンクダイエーが、2シーズン連続でレギュラーシーズンを“1位通過”*2しながら2位チームに敗れてシリーズへ進めないというのでは、とりあえずの決まりとはいえやはり不満や不公平感も残ってしまうだろう。
 メジャーでも2位のチームがプレーオフに残るじゃないか、ワイルドカード(全地区の2位のうちで最高勝率を挙げたチーム)でプレーオフに出たチームがチャンピオンになったりするじゃないか……とはいうが、あちらはひとつのリーグに3つの地区分けがあるという点で根本的な仕組みが違うし、それにそもそもチーム数が圧倒的に違う。なにせ日本の倍以上の球団があるのだ。日本の環境にそのまま当てはめることはもちろんできない。
 日本のようにひとつのリーグに6チームしかない状況で、3位までのチームがプレーオフに残れるというのは、やはり問題が大きい。3位チームとのプレーオフが行われるぶんセ・リーグ覇者の待ち時間が長くなるという問題は、セもプレーオフを導入すれば解消されることだけれど、問題はそこにはない。
 日本の体制は1リーグにつき1地区しかないシステム(というより、リーグ内に地区分けがないシステム)であって、しかも繰り返すようにたった6チーム。3位までがプレーオフに出られたら、半分も出られることになってしまう。地区分けのない単一リーグのレギュラーシーズンの勝ち星で明らかに“勝った”チームが、明らかに“負けた”チームとプレーオフで改めて戦うというのは基本的におかしいし、“勝った”チームには不満感も募るだろう。その意味では、3位はもちろんのこと、いまの1リーグ1シーズン1地区状態で1位チームが2位チームとプレーオフで戦うのも本当はおかしいと思う。当然、メジャーのワイルドカードとも意味合いがかなり異なっている*3。いまの仕組みをもし残すとしたならば、1位のチームにもっと圧倒的なアドバンテージを与えてもよかろう。たとえば1位チームは1勝でOK、2位チームは4勝必要……というレベルで。
 

◆とりあえず、チームを増やそう!

 さらにもう少し考えると、現行の体制およびチーム数のまま行くのならば、少なくとも3位チームのプレーオフ進出はなしにしたうえで、“1位と2位”ではなく“優勝チームと優勝チーム”がプレーオフを戦う仕組みを導入することが必要なのではないか。
 そう、パ・リーグには前例がある、前期・後期制である。前期優勝チームと後期優勝チームがプレーオフで戦うならば、どちらもれっきとしたレギュラーシーズン優勝チームであるから、明らかにシーズン1位のチームと明らかに2位のチームが対戦するような不公平感も生まれないだろう。同様にセ・リーグにも前期・後期を導入し、同じシステムで、両リーグでプレーオフを行ったらどうだろう。
 ただし、これはあくまでも「現行の体制およびチーム数のまま行くのならば」の話である。前期・後期制にも実は問題があるから、そう強力にススメはしない。
 ではどうするかといったら、やっぱり球団数の増加だ。野球界の重鎮の間では1リーグ制の話が深まっているらしいが、将来の日本の野球を考えるならむしろ逆。球団を削減して1リーグなんかにしたらダメだ。いま、球団数は増やすべきときである。
 たとえば現行6球団ずつの両リーグをひとまず10チームずつまで増やし、それぞれのリーグを5チームずつの東西2地区に分ける。もちろん地区をまたいだ対戦やリーグ間交流戦は行ったうえで各リーグ2地区の優勝チームを決め、地区優勝同士がプレーオフでリーグ優勝を争い、その勝者が最終的にリーグ代表として日本シリーズに進出する……こういうのがとりあえず理想かと思う。
 あるいは、現行の両リーグ計12球団というチーム数を変えないのならば、いっそのこと2リーグではなく3リーグ制にするという手もある。4チームずつ、東、中、西の3リーグに分け、各リーグの優勝チームと、全リーグ通じての最高勝率2位チーム(メジャーでいうワイルドカード)の4球団が日本シリーズを戦う。こんな感じでもいいのではないか。
 とにかく、方法などはいくらでもある。要は“変える”気持ち、将来に向けて日本のプロ野球を発展させていく意思があるかどうかが問われているのである。僕のような素人が考えるよりも、専門家のみなさんのほうがよりよい案を編み出してくれることだろう。日本のプロ野球の未来に期待をかけて、待ちたいと思う。
 
 (5:33)
 

*1:スイープでチャンピオンが決定だなんて書くと、今週末の秋の天皇賞スイープトウショウが勝つみたいだ。でもこうやって書いたから、たぶん勝たないだろうw

*2:正確にいえば、ダイエープレーオフ導入前の2003年に優勝しているので、3シーズン連続でパ・リーグのトップ

*3:メジャーの場合は両リーグ合わせて30チームと球団数が多い。現在、ア・リーグが14チーム、ナ・リーグが16チームある。各リーグに東・中・西の3つの地区があり、それぞれの地区で優勝チームが決まるわけだが、地区同士はレギュラーシーズン中もお互いに戦うし、さらにリーグをまたいだ交流戦もある。その結果、たとえばある地区の優勝チームは勝率が5割にいくかいかないかという程度なのに、別の地区の上位2チームは6割近くに到達したなんてことも起こりうる。優勝チームが5割を割ることだってある仕組みなわけだ。こういったケースでは、3地区を通じていちばん勝率が高かった2位チームをプレーオフに出すというのは説得力もあるし、ある意味公平であるともいえる。もちろん3チームではプレーオフを組みにくいという事情もあるわけだが。とにかく、各地区のレギュラーシーズン優勝チームはあくまでも優勝であって、日本のような“1位通過”とは呼ばれない。優勝は優勝、ワイルドカードワイルドカードだ。レギュラーシーズン2位のチームが“○○地区優勝”と呼ばれることはないわけである。