マーワーの進む道

 台風11号「マーワー」。26日午前1時現在、965hPa。相模湾を北東方向へ進んでいるようだ。まもなくどっかに上陸するはず。
 関東にこれほど接近あるいは上陸する台風としては、それなりにスゴイほうなんだろう。伊豆大島では最大瞬間風速57mを記録したとか。いわゆる、100m走で2秒かからない系だ。
 ニュースになると名前を聞く静岡市の用宗漁港も、映像を見るとたしかにたいそうな波だった。このあと漁港中継のバトンは千葉の銚子漁港に渡されるのか。
 
 台風のおかげといったら申し訳ないが、政令指定都市に移行して区制を敷いた静岡市、こうしてニュースで地名を連呼されることで「駿河区」「葵区」「清水区」という区の存在が全国に知れ渡ることであろう。
 静岡市だけでなく、たとえば「御前崎市」あたりもこうして台風がくることで「あ、御前崎って市なんだ」(あるいは「市になったんだ」)と認識されるに違いない。皮肉なことに、「あの市は、あの町は、いまどうなったんだ?」と行政的消息不明な自治体の現在の名前は、こういう災害情報で大々的に全国お披露目となるケースが多いのである。
 そんなこんなでぼーっとニュースを聞いていたら、「静岡市葵区うぶめ」という地名がアナウンサーに音読された。調べてみるとこの“うぶめ”は京極夏彦の「姑獲鳥」ではなく「産女」。まあ「姑獲鳥」を“うぶめ”と読むのも元は産女から来ているわけだろうが、ともあれこうして台風情報のニュースで聞くとやはり異様な地名である。
 
 さて、この時間、東京も暴風域に入り始めているようだ。
 わが故郷・東京は大田区の蒲田もそろそろすごい風にさらされているんだろうか。今回、京都や大阪は台風の影響がなかったので実感はない……はずなんだけど、NHKではずーっと東海・関東の台風情報が流されているのでけっこう実感はある。
 日本というのは、やはり台風国家なのだろう。なにせ台風(タイフーン)ってのは世界語であるくらいだから。
 だからこそ、台風の来訪は一種の国家的な大イベントとなるわけだ。北海道から沖縄まで、全国そろって台風で大騒ぎする現象は、それはそれで日本という国の文化のシンボリックな部分として、大切にすべきものであるのかもしれない。 (1:11)