旅先で映画を見るの、好きなんです。

京都祇園ホテル

祇園でうなぎ丼950円は安い

 京都は昼前からポツリポツリと降ってきた。ただ本降りにはならず、降ったりやんだり。で、午後にはもうやんでいる。夕方近くには西から陽射しも現れた。風がとくに強いこともない。台風の影響は、ないようだ。
 きのうときょうは京都祇園ホテルに宿泊。あしたはまだ決めていない。
 京都祇園ホテルはまあただのホテルだけれど、とにかく場所がベンリ。名前のとおり祇園の真ん中で、写真でも左奥に見えているように“祇園さん”こと八坂神社はすぐそこ。高台寺南禅寺清水寺三条大橋なども程よい距離。食べる場所には事欠かないし、四条河原町先斗町、錦小路、新京極のほうへ歩いていくのもいい感じの道のりで、途中に鴨川を渡れるのもいい。もちろん京阪や阪急、地下鉄の便もよく、競馬で京都にくるときもここを利用する*1
 写真の右下、1階にはスターバックスがある。ここは外国人のお客さんが多い。やはりスターバックスなら入りやすいということか。外国人にまじって着物のお姉さんがコーヒーを飲んだりしているのも、京都のいいところだ。それより何より今回、禁煙ルームに泊まって、スターバックスにも行ってるとか、僕もほんと変わったものだなぁ。
 きょうは急きょ仕事をやらなければならなくなったので、昼は近場で済ませようと、四条通沿いの「ぎおん家」でうなぎ丼を食った。なにげに2日連続で京のうなぎだ。
 ホテルの真ん前なので場所もベンリだが、出てきた品もよかった。ほくほくでなかなかのボリュームのうなぎがのった丼に、赤だしと冷奴も付いてなんと950円。安い*2。あなごの天とじ丼というのも気になった。またこんど食おう。客は地元っぽい人ばかりで、着物姿の女性3人がそばや丼物をたいらげ、タバコを吸いながら大声でヒトの噂話をしているのがむちゃ興味深かった。
 食事を終えてホテルに戻り、仕事を始めようとしたけれど、どうもその気にならない。気が乗らないなら仕方ないので、ぶらっと散歩に出た。新京極の北のほうまで歩くと、ちょうどMOVIXで「ノロイ」が始まる時間だったので、見てきた。
 いや、これは楽しい映画だ。出てきた観客たちがみんな、リアルとフィクションの区別がつかなくなった会話をしているのも愉快な感じだった。
 

◆まあよく並ぶこと……

 15時過ぎに終わって、祇園のほうに戻ってきた。「茶寮 都路里*3の本店は例によってひどく並んでいる。ほんと、すごい。かつて1度入り、1度断念したことがある。3度目は、いまのところとくにない。
 まあ、都路里は最近、汐留にもできたし(笑)、京都にだってほかに支店がある。行ったことはないけど高台寺店なんて雰囲気よさそうでは? 「鍵善」は祇園の本店と高台寺店と両方行ったけど、高台寺店のほうが好きだったりするし。ああ、こんなこと書いてたら鍵善のくずきりがむしょうに食べたくなった。。。
 で、小腹がすいていたので何か軽く食べようと思い、四条通りから細い横道へ入ったところの喫茶店が目にとまったのでそこへ。「喫茶ハーモニー」という、なんかベタなところ(笑)。
 18種類のスパイスを加えたという「自家製インデアンカレー」(表記ママ)と、水出しの備長炭焙煎コーヒーをいただいた。カレーは、真っ白ではなくいくらかピラフっぽいライスにかけられている。最初のひと口はきわめてシンプルな味わいかと思ったが、あとから上顎にピリリとスパイスがくる。バランスが取れたおいしいカレーだ。コーヒーのほうは、こげくさい苦味がいい感じ。
 まあ、なんてことのない喫茶店のなんてことのないカレーとコーヒーと言ってしまえばそれまでだけど、まあ、まあまあいい。物静かでちょっぴり自信のなさそうなマスターも悪くない。場所は有名な「よーじや」の祇園店からちょこっと八坂神社寄りにある細い横道を入ったところ。
 

◆感動のねぎうどん

 ホテルに戻り、ノートパソコンを広げてお仕事。3時間ほどして、またおなかがすいてきた。インデアンカレーは量がやや少なめだったので、まあ仕方ない。ホテルを出て四条通の南側の小道に入り、にぎやかな花見小路を横切って、その向こうの静かな界隈にあるうどん屋「祇をん 萬屋」へ。きのうここを通ったとき、「ねぎうどん」がめちゃめちゃうまそうだったので目をつけておいたのだ。
祇園・萬屋のねぎうどん 店の前で水を打っていたやわらかな風情の主人と挨拶をかわし、店内へ。客は誰もいなかった。お茶を運んできたおばちゃんに、迷わずねぎうどんを注文。しばらくして出てきたそれは、一面が青い九条ねぎに埋め尽くされ、うどんはまったく見えない。九条ねぎの海の真ん中に、ピラミッドのような生姜の山がちょこんと座っている(残念ながら右の写真は、その生姜の山を溶かしてしまったあとに撮ったもの。……だって、早く食いたかったんだもの)。
 たっぷりの九条ねぎをかき分けると、中から白いうどんが見えてきた。まず、生姜を溶かした汁をひと口……うまい。昆布とかつおだしのあっさりした汁だが、そこに生姜が溶け合い、あっさりの中にやや尖りが生まれて上品さが漂う。そう、上品というのは常にどこか尖ったものなのだ。まさに祇園の町にしっくりくる、味だった。
 つづいて、一面を埋め尽くす青々とした九条ねぎを箸でひとつかみし、口に運ぶ。奥歯でひと噛み、ふた噛み。なんて甘くてみずみずしいんだろう。京都の九条ねぎだから、いわゆる関東風の太い長ねぎとは違う。青い葉の部分を好んで食べる点も違うわけだが、ねぎの臭さも苦味もなく、やわらかながらしゃっきりした歯ごたえと相まって、口の中に新鮮さが広がっていく。いままで食べた九条ねぎの中でもこれは良質のもののように感じられた。聞いてみれば、農家からその日に直接買い入れている九条ねぎだとのこと。やはり、という感じだ。
 うどんはやわらかめで、これが九条ねぎの食感と対照的なバランスを生んでいる。入っているのは、以上。汁と、九条ねぎと、生姜と、そして麺だけ。シンプルである。余計なものが何もない潔さが、実にいい。けっして高級な京料理ではないけれど、ねぎの質へのこだわりや気配りが感じられ、感動的なうまさだった。主人は「ねぎのしゃぶしゃぶ」と表現していた。たしかに、九条ねぎが主で、その他は従。たっぷりの新鮮なねぎをうまく食べるために、うどんと汁と生姜がある。ほんとそのとおりである。
 ホテルに帰って調べてみたら、祇園の舞妓さんや芸妓さんが食べにくるようなお店だそうで、祇園御茶屋や、南座に出る役者さんも出前を頼むとのこと。かなり気に入ってしまったので、今回の滞在中にまた行くことだろう。京の庶民の誇りを感じさせる味に触れてみたい人は、ぜひ一度訪ねてほしい。
 
 祇園萬屋」…京都市東山区花見小路四条下ル二筋目西入ル
 
 (20:18)
 

*1:京都競馬場京阪電車淀駅が最寄りなので、泊まるのも京阪沿線がベンリ

*2:ただしこれは平日限定で、通常は1400円らしい

*3:つじり。宇治茶の老舗「祇園辻利」が開いた喫茶店