野茂
やっぱり、野茂だ。
新天地タンパベイ・デビルレイズに移籍し、本拠地トロピカーナフィールドで今季初登板、メジャー通算300先発登板を迎えた野茂。亜熱帯フロリダ州の新興チームでまとったメジャー11年目のユニフォームに、背番号は近鉄時代の「11」。8月で37歳となるこの年に、これまでとはまったく異質の土地で、初々しくも初心に帰っての再スタートである。
3回にソロホームランを打たれたものの、許したヒットは結局この1本だけ。6回を投げ終えたところでマウンドを降りた。投じた球は91、奪三振4、失点はわずかに1。貫禄のピッチングで、堂々たる復活だった。僕がこれまでの人生で、そしてこれからの人生でもきっと、いちばん好きな野球選手はやっぱり野茂で間違いないよ。
そして野茂復活のこの日に、対戦相手のアスレチックス・藪も記念すべきメジャー初登板を飾った。1-8とデビルレイズが大量リードした4回裏、1死満塁で打者4番というピンチにマウンドへ。この回はタイムリー2本を打たれ3点を献上したが(自責点は0)、5回から7回は無失点で乗り切った。6、7回は三者凡退、とりわけ7回は三者連続三振。とにもかくにも初登板で3回2/3のロングリリーフ、いやいやとてもすばらしかった。
4回から6回は日本人投手ふたりが投げ合う形になった。しかもふたりは同い年。そして、僕も同い年*1。野茂、藪。もう決して若くはない同い年のふたりが海の向こうでがんばる姿に、ほろりとした感動を味わった。日本の片隅でくすぶるいまの自分が情けなくもなるけれど、同時に勇気も湧いてきた。
試合はデビルレイズが11-2でアスレチックスに完勝。野茂、新天地の初登板で見事に今季初勝利だ。日米通算200勝まであと3つ。
一方で、投手陣があまりにひどすぎるのがマリナーズ。きょうも8回裏終了時点で6-3とリードし、9回表は満を持してクローザーのグアルダードがマウンドに上がったものの、エラーが絡んだとはいえまさかの4失点で逆転。9回裏、イチローの四球などで2死一、三塁のチャンスをつかんだが後続が凡退し、結局痛い痛い黒星を喫した。イチローがきょうも2安打*2するなど打線は悪くないのだから、一日も早い投手陣の復調を期待したい。
その9回裏、2死無走者でイチローが打席に入ると、セーフコフィールドを自然発生的な「イチロー!」コールが包んだ。そのコールは1球目も、2球目も、なかなかやまなかった。
“ミスター・マリナーズ”と呼ばれたエドガー・マルティネスが引退したいま、シアトル・マリナーズの顔はイチロー以外にありえない……その事実を改めて知らしめてくれる出来事だった。 (9:49)