南アフリカ旅日記 〜day2 Macau and for SA〜

<6月23日>
 香港もマカオ(中国語では澳門)も、大枠でいうならもちろん中華人民共和国である。しかしご存じのように中国本国とは体制が異なるうえ、香港で入国手続きをしても、マカオに向かう際は香港で出国手続きを行い、マカオではマカオの入国手続きを行う必要がある。さらにマカオから香港域内に立ち寄って中国本国に向かいたいなら、マカオ出国→香港入国→香港出国→中国本国入国……という煩雑な手続きが求められる。僕も以前、やったことがある。パスポートのスタンプも一気に増える。逆に短期間でスタンプを稼ぎたい人なら、この方法がいちばん手っ取り早い(そんな人がいるのかどうか知らんけど)。
 出入国スタンプのデザインも異なるし、香港は香港ドルマカオはパタカ、中国本国は人民元と、それぞれ通貨も別のもの(香港で人民元マカオ人民元香港ドルは使えるとはいえ)。離れているわけではなく隣り合った地域なのに往来がフリーでない現状は、いくら一国二制度といわれようと、やっぱり同じひとつの国であると呼ぶことにためらいを覚えさせる。
 
 閑話休題。むこっちは午前5時を少々回った頃、ホリデイイン・マカオにたどり着いた。旅の始まりなのに、さすがにすでに疲れている。いきなり成田で6時間以上待たされたのだから、仕方ない。デルタ航空からは遅延の詫びとして1000円分の食事券が出たそうだ。成田で食事をしたら、1000円はあっという間に消えてしまう。時間をつぶすのも大変だったろうと思う。
 ロビーで出迎え、さっそく部屋へ。もちろん部屋は、言うまでもないがダブルではなくツインベッドルーム。海外の宿ではツインをリクエストしておいたのに、行ってみたらダブルだったということも多いけれど、今回の旅ではすべての宿で無事ツインだった。ほんとによかった(笑)
 2日目のこの日は、夜にターボジェットで香港の空港に逆戻りし、日本から飛んでくるとっきーと搭乗ゲートで合流して、深夜の南アフリカ航空の便でヨハネスブルクに向け離陸する。よって午前から夕方までは目一杯、マカオ観光&カジノに充てられるのである。
 むこっちは数時間の睡眠で、10時前にチェックアウトして、いざ世界遺産の街へ繰り出した。僕は2006年に一度訪れたことがあるけれど、聖ドミニコ教会むこっちは初のマカオ。映画に出てくる悪徳企業の本部のような巨大カジノ「グランド・リスボア」の威容を見上げつつ、まずはポルトガル統治時代の雰囲気が残る「セナド広場」へ向かった。
 コロニアル風の建物に囲まれ、噴水が印象的なセナド広場から賑やかな道を抜けると、やわらかなレモン色の壁が美しい「聖ドミニコ教会」(右)。その先を進み、有名な「聖ポール(ポルトガル語でいうならサン・パウロ)天主堂跡」までつながる大三巴街に入ると、マカオ名物・ポルトガル風エッグタルトを売っている店に多く出くわす。朝食を取らずに宿を出てきた僕らも、当然食す。前回初めて食ったときも感動したけど、今回もめっちゃうまかった。なんだろう、からだがふんわり浮かび上がりそうな甘さと食感。別の店にも行き、僕は2個、むこっちは3個食った。
聖ポール天主堂跡 聖ポール天主堂跡は、世界遺産マカオ歴史地区」のシンボル。400年ほど前にイエズス会が建てた教会だ。火事で大方焼け落ちてしまい、いまはファサードと一部の壁のみが残っている。正面に昇っていく階段では、中国系の人たちを中心に、大勢の観光客たちが聖堂をバックに記念写真を撮りまくっている。昨晩から降っていた雨も上がり、雲間からは強烈な陽射しが洩れてきては、路上の水分を熱気に変えて漂わせていた。
 半袖シャツが瞬時に濡れそぼるほどの汗をかく。天主堂跡の脇にある「モンテの砦」の丘を登ると、湿気に満ちる旧市街を見渡せた。モンテの砦の大砲とグランド・リスボアここでも主役はグランド・リスボアの金色のタワー。かつてオランダ軍を撃退した何門もの大砲が、マカオのもうひとつのシンボルであるこの不気味な建造物を狙うかのように設えられている。その光景は、なかなかに暗喩的でよろしい。もちろん、この丘も世界遺産である。
 いくつかの世界遺産を巡った後、空腹の僕らは小さな定食屋に入った。中国語で書かれたメニューというのは、英語のメニューよりはるかに想像しづらいと僕は思う。とりわけ簡体字を使わない広東語は、字面がやたらと仰々しい。
 ただ、どれもこれも安くてうれしい。日本円で300円、400円程度。ちなみにマカオの通貨はパタカだけど、香港ドル(港元)が普通に使える。というより香港ドルのほうが多く流通しているらしい。でも、香港ドルで払って、お釣りはパタカのコインだったりするからおもしろい。
 お昼の時間帯で賑わう食堂内。メニューの文字から中身を適当に想像しつつ、僕は「●(齒偏に咸)魚上洮N炒飯」、むこっちは「滑蛋上洮N飯」と一品ずつ注文し、さらにサイドで「牛肉炒西蘭花」を頼んだ。
 むこっちは「安いからもう一品いこうか」と言ったけれど、僕はとりあえずいま頼んだものがきてからにしようと制止してみた。案の定、●魚上洮N炒飯(まあ、チャーハン)も、滑蛋上洮N飯(あんかけチャーハンみたいなの)も、牛肉炒西蘭花(牛肉とブロッコリーを炒めてとろみをつけたやつ)も、みんなすこぶる盛られている。それなりに食うほうである僕も、もっといっぱい食うむこっちも、かなりの満腹になって、もう一品頼まなくてよかったと安堵したのだった。
 
 食後はカジノ。どのカジノにしようか考えた末、やっぱり気になるグランド・リスボアに入っていった。さすがに長旅の始まりでカネをすっては困るから、スロットマシンを中心に、少額でちまちまとやった。結果は、二人とも若干の損。まあ、あの掛け金では旅行代全部を稼ぐことはそもそも叶うまい。
 マカオのカジノの雰囲気は、ラスベガスとはけっこうちがう。アルコールを配る金髪のお姉さま方がいないのもそうだけど、客の目もちがう。賭けに臨むその真剣味は、マカオのほうがもっと凄い気がした。「大小」とか、冷静かつ物静かながら鋭い目つきで出目をメモしている。こういうとき中国人はいかにも強そうだ(ラスベガスでも大量に儲けている中国人を目撃したが)。
 数時間滞在して夕方を迎え、ホテルに預けてある荷物をピックアップして港へ向かう。6時半発のターボジェットのチケットを買うとき、乗り継ぎのフライトを聞かれたので(空港行きターボジェットはどうやら飛行機乗り継ぎ客専用のようだ)、「サウス・アフリカン・エアウェイズ」と答えると、
「お、もしやワールドカップに?」とカウンターのおっちゃん。
「そうですよ」
「日本は(デンマーク戦に)勝てるかね」
「勝つでしょう。Maybe」
「そうか、応援してるよ、Good luck!」
 そう、僕らはこれから本当に南アフリカへ行くのだと、妙に高まってきた瞬間だった。
 香港に着くと、7時半ちょっと前。わずかに西の水平線に日の名残が感じられはしたものの、夜の帳はほとんど下りきっていた。南ア行きの便が出るまでにはまだ4時間以上ある。とっきーが香港に着くのも10時頃。だいぶんあるので、とりあえず晩飯を食おうということになった。ターミナルのフードコートの味千ラーメンで、むこっちはラーメンと餃子(とミニチャーハンだったかな)、僕は白米と味噌汁と漬物が付く生姜焼き定食。味噌汁ともしばらくお別れだな、と思う。
 W杯を流しているテレビを探したけれど見当たらず、香港時間10時スタートのゲーム(イングランドスロベニア戦、アメリカ・アルジェリア戦)は見ることができなかった。とっきーがフードコートに姿を現したのは、もう10時半を回っていたか。僕らは再会を喜び(?)、搭乗ゲートに向かって、日付が変わる直前、11時50分発のヨハネスブルク行き南アフリカ航空287便に乗り込んだのだった。(day3へ続く)
 
 セナド広場
 ポルトガル時代の趣を残すマカオ旧市街の中心・セナド広場
 
 大三巴街
 こちらはやっぱり中国……な、聖ポール天主堂跡に続く大三巴街
 
 エッグタルト1
 大三巴街で売られているポルトガル風エッグタルト
 
 エッグタルト2
 全体像は6月23日の記事で載せたので、今回は中身もどうぞ
 
 よくわからない像
 聖ポール天主堂跡の近くにある、なんだかよくわからない像
 
 (7:48)