傘を振る人

 雨の日に僕を憂鬱にさせるのは、その天候や湿気ではなくて。人。人である。
 駅の構内など、閉じた傘を歩く動きに合わせ、そのまま前後にリズムよく振っている人がいる。勢いづいてやってくる先端は、けっこう危ない。僕も太ももに当てられたことがあるし、あわや急所直撃という危機もあった。
 この混雑した東京の街中、傘を振ったら危ないという想像力がないんだろうか。後ろに小さなこどもがいたら、一発で失明だ。
 雨は好き、雨の景色も雨の音も好き。だけども辺りを気にせず傘を振る人を見ると、せっかくの雨気分が台無しになる。人間、もうちょっと想像しよう。相手がどう思うかなんて高尚なことではなくて、自分ならどう思うかを。
 
 (12:45)