エリザベス女王杯

　＜エリザベス女王杯＞（ＧI・京都芝2200）
　競馬は記憶のスポーツだという。だから物忘れが激しくなった年齢は、記憶力のいい若い人より不利なのかもしれない。
　スペシャルウィークのことを考えてみた。秋の京都でスペシャルウィークは勝ったか。
　3歳時、菊花賞ではセイウンスカイの後塵を拝した。古馬になってからは、春の天皇賞を制し、夏の宝塚記念でグラスワンダーに屈した後、秋の始動戦・京都大賞典では7着に敗北した。そして舞台を府中に移した続く天皇賞では、まさかの人気薄（といっても4番人気）から盾を勝ち取ったわけだけれど。「秋の京都」の話からは離れるが、あのときのステイゴールドとの馬連は自信の馬券。あれで万馬券になるとは……実においしい思い出である。ちなみにスペシャル‐ステイが本線で、スペシャルと休み明けのエアジハード、ステイとエアジハードも買っていた。3連単があった時代なら、さらにおいしかったなと思う。
　スペシャルウィークの仔はどうか。秋の京都のＧIでは、やはり一頭も勝ってはいない。ブエナビスタにしても勝ちにはハナ差届かなかった。どころか結果の着順は悪夢の降着だ。秋の京都のＧIは、スペシャルウィークにとって鬼門とさえ言える可能性がある。府中ならいいだろうが、京都では評価を下げて正解だろう……とここまで考えてみて、スペシャルウィークは3歳の秋に京都新聞杯を勝ってるじゃんと思い出した。産駒にしても、ＧIではないけどインティライミが京都大賞典と京都新聞杯を勝ってるし（調べてみたら、ほかにオースミダイドウがデイリー杯を勝っていた。そしてつい先週、タガノエリザベートがファンタジーSを勝ったのも記憶に新しい）。人間がとっさの場面で思い返せること、しかもこの歳になって記憶から引っ張り出せるものなんで、実にアテにならない。
　そんなわけで、「スペシャルウィーク産駒にとって秋の京都のＧIが鬼門」という可能性は、おそらく考えすぎであろうことが判明した。もちろんＧIを買った馬がいないことは事実なんだが……親も仔もＧIIまでは勝っているんだから、少々ムリがありそうだ。むしろブエナビスタにあるとするなら、大外ブン回しての届かずか（馬場もパンパンの良にはならないだろうし）、あるいはオークスか札幌記念がピークの早熟だったか……というくらいだろう。
　もちろんそのふたつとも、可能性はある。それなら秋の京都のＧIで強いのは何か？　答えはダンスインザダーク以外にないだろう。このまえの菊花賞でもダンス産駒が1、2着で穴を開けている。今回も、難しいことは何も考えず、ダンス産駒でいいのかもしれないと考えた。2頭出走しているが、順調さを考慮するなら前走・府中牝馬Sを勝ったムードインディゴしかない。この馬の本命はこれで決まり……と考えようとしたが、ちょっと待てよ。
　先日の天皇賞でスクリーンヒーローが激走したことを思えば、前年覇者のリトルアマポーラはやはり気になる。勢いという点では重賞未勝利ながら前走で今回と同じ舞台の古都Sを勝ったメイショウベルーガも、ことしは菊花賞で重賞未勝利馬がワンツーなのだから侮れない。また、ブエナ以外の3歳勢ではローズSから秋華賞でメイチだった可能性が高いブロードストリートより、秋華賞で本命にしたジェルミナルのほうがおもしろいかもしれない。最後にもう1頭、未知の要素ながらフランスの3歳牝馬シャラナヤ。初の輸送と日本の硬い馬場という課題はあるも仏ＧI・オペラ賞の後方一気は見事だったし、週末の雨で馬場も多少軟らかい。おまけに鞍上はルメール……となるとノーマークは怖すぎる。
　とまあそんなこんなで悩んだ挙げ句、ことしのエリザベス女王杯は以下の結論に落ち着いた。枠順と馬場（雨はやんで良になってもパンパンの高速馬場とまではいかないだろう）の利、および勝春が京都のＧIで勝つイメージがどうも湧かないことを考慮して、本命は昨年の覇者・リトルアマポーラ。鞍上は前年のルメールから替わるも同じフランスの若き名手・スミヨンなら申し分ない。有力馬が後方に待機する中、前々で押しきる横綱相撲に期待したい。
　対抗に、2着までのイメージなら十分に湧くムードインディゴ。府中牝馬Sは展開が向いたとはいえ強かった。単穴にメイショウベルーガを指名して、以下、シャラナヤ、ジェルミナル。もちろんブエナビスタは怖いので、☆としておいた。○▲と△の1頭は前走勝っている馬で、「牝馬は勢い」を重視した。
　馬券は、◎の単複と、◎‐○、◎‐▲の馬連が本線。ムードインディゴ激走の可能性を担保して○‐▲の縦目と、ブエナビスタに敬意を表し◎‐☆も押さえておこう。土曜のレース（京王杯じゃないけど）でちょっと余裕ができたので、◎1頭軸マルチで○▲△△☆を相手にした3連単も買おうかなぁ。
　競馬は記憶のスポーツだという。ただ、記憶力がいくらいいからといって、べつに馬券が当たるわけではないことも、また確かな話なんである。
　
　　◎リトルアマポーラ
　　○ムードインディゴ
　　▲メイショウベルーガ
　　△シャラナヤ
　　△ジェルミナル
　　☆ブエナビスタ
　
　（13:32）