夏の夜の珍事

 3週間ほど前の、ある夜。美ら島に行こうと蒲田の街を歩いていたときの話だ。
 向こうから近づいてきた女性……年の頃は40歳前後だろうか……が、すれ違いざま、いきなり「ごめんなさい!」と声を上げた。
 ? ?
 と思いきや、その女性、道沿いの駐車場に駆け込んで……オェッ、ダーッと。
 要は、お戻しになられた。
 僕は、考えた。
 彼女の「ごめんなさい!」は、やっぱり僕に対して、すぐ近くで嘔吐することを謝するため、あらかじめ詫びを入れたということだったのだろうかと。
 彼女が凄惨な状況に陥っているため、僕も聞くに聞けず、その場を去った。
 
 夏の夜の出来事だった。
 
 (22:16)