徒歩と李白

 数年前から歩数計(いわゆる万歩計)を持ち歩いている。いつもポケットに入れて。
 数年前に買ったタニタの小さい黒いやつを、昨年なくして、同じ型の赤いのを買った。それも何ヵ月か前になくし、いまはまた同じ型の白いやつ。3台目。いや3代目か。新しく操作を覚えるのもメンドウだから(覚えるほどの操作も大してないんだけども)、同じのを買い続けている。
 しかしそれにしても、少々紛失のサイクルが短い。とくに2代目の赤いのが短かった。3代目の白いやつは、いましばらくなくさずに使い続けたいもの。そんなに安いモノでもないし。
 目標、1日2万歩。どこか旅に行ったときとか、取材や何らかの事情で歩き回るときでないと、日常生活での2万歩達成は案外難しい。なにせ毎日出勤している会社員の身ではないので、デイリーで強制的に歩かなければならない区間というのがゼロ。意識して歩く時間を設けなければならないから、それはまあ大変といえば大変。歩くのは好きなので苦にはならないんだが、雨の日とか、暑すぎる日とか、寒すぎる日とか、眠すぎる日とかは、家を出るのを億劫に感じるときはやっぱりある。というわけで日頃は、1万から1万6000歩辺りがどうしても多くなるのが現状。かなしいかな。
 1万歩すら切るような日ももちろんあって、そういうときはひたすらむなしくなる。家に着いたとき9600歩くらいだったら、悔しいので家の前を400歩、行ったりきたりする。1万歩と9600歩で、なにかカラダに与える影響に具体的なちがいが出るわけじゃない。もし仮に9999まで効果がなくて10000に達したら効果が出る……なんてことになったら、それはそれでスゲーなぁって思うんだけれど。
 でも、カラダにとっては変わらなくても、精神的な影響はたしかに異なる。「ああ、あと400歩……」と思い悩んでストレスになるくらいなら、悩みの種をすっきりさせたほうがはるかに精神にはやさしく、ひいては肉体にもやさしい。
 歩数計を導入して以降でいちばん歩いたのは、6万8000歩近辺というところ。これって僕の歩幅で計算すると約40kmではないか! フルマラソンだぜ。江戸時代の街道旅じゃないんだから、ほんと、ヒマな話だ。
 ところで、1万歩行ったとか行かないとかそういうつまらんこととはまったく別の話で、最近思い悩んでいることがある。何かというと、こうして一所懸命歩いていても、ここ最近はなかなか痩せてくれないのである。
 体重は、概ねキープしている。でも数年前と明らかにちがうのは、肉のありかだ。体重が同じだからって体形も同じとはかぎらない。それはいまの僕のが証明している。……そう、肉の付く場所が変わってきちゃうんだ。年齢? 加齢? 理由はなんでもいい。現実は現実。
 イヤだねぇ。まああれだけ肉体をきっちりトリートメントしてるイチローだって衰えていくことは間違いないんだから、なんも鍛えてない僕が衰えるのはこれ以上なく自明のことか。
 かなしい。
 
 ともあれ、体重は変わらないのに体形が変わっていく切ない現実に抗うため、歩くだけでなくちょっと走ろうとか、筋トレもしようとか、そういうことも考え始めた昨今。これに付随して、インプットのほうも改革しようかと思い、休肝日の増量計画を考えている。
 休肝日は、現在週2日。2日連続お休みということはめったにないけれど、1日ずつにせよなんとか確保できているのは、僕の意志の強さと評価すべきか。エライよ。
 ただし、酒はやっぱり太る。酒だけなら太らないとかよくいうけれど、やっぱり太ると思う。酒はカロリーが高い。「アルコールのカロリーは優先的に消費されるから太らない」って? しこたま呑んで床に就く人間が、いったいいつ、その多大なカロリーを消費するんだか。
 それに何より、肝臓は日に日に衰えていく。体形の維持に加え、いつまでもおいしい酒を呑み続けたいと願うならば、休肝日の設定は必須なのである。
 そこで、現在週2日の休肝日を、週3日に増やすべきかと、いま真剣に検討中。週3日にできれば、肝臓への負担は格段に減るし、カラダの形に対してもいい影響がありそうだし、酒もきっともっとうまくなる……と自分に言い聞かせて。
 本気ですよ。と、きょうも取材の帰りにたらふく鳥取の日本酒を呑んだ呑兵衛が言うセリフじゃないか。一盃、一盃、また一盃……。
 
 (22:07)