Norwegian Baseball

 アメリカ人やカナダ人、メキシコ人、あるいはアジアの人たちと野球を見にいく人はいるだろうけれど、ヨーロッパ人、とくにノルウェーの人と野球観戦をした経験を持つ人は、あまりいないんじゃないかと思う。言うまでもなくノルウェーといったら野球のイメージゼロ。思い浮かぶのはやっぱりノルディック、アルペンなどのウインター系か、あるいはサッカーだろう。
 僕は数日前、その貴重な体験をした。相手のノルウェー人は、オスロの大学の先生。講演か何かで2週間、日本に滞在中。その合間に、野球を見にいくことになった。
 僕が彼と知り合ったのは、ことしの春のことだ。もともと彼は、仙台の大学で働く僕の従妹が世話になった人で、これまでも日本にくると従妹の案内で観光などをしていた。ことしの春もそんな感じで、先生の案内のために従妹が上京。その際、従妹から僕とうちの奥さんにお誘いがかかって、4人で六本木の国立新美術館へ行き、昼はあの中にあるポール・ボキューズでフレンチのランチを共にしたりしたのだった。
 その際の会話で、彼がなんと野球好きであることが判明する。「え、ノルウェーなのに!?」と意外だったが、講演その他で世界を飛び回っている彼のこと、実はオークランド・アスレチックスの大ファンで、カリフォルニアに行くときはよく見にいくのだそうだ。
 そんなところから野球の話題で盛り上がり、次回来日したときには一緒に野球を見にいこうという話になった。その“次回”が、3日前だったわけである。
 場所は東京ドーム、カードはもちろんベイスターズ戦。三塁側ベンチ上のS席を取り、今回は従妹は上京できずうちの奥さんも用事があったので、彼と僕と二人での観戦となった。
 ちなみに彼は、日本の野球は初観戦。女性陣もいないということで、会話もほとんど日米の野球話で埋め尽くされた。彼も相当に野球好きなので、お互い話題が尽きることもない。試合自体は寺原が初回に6点を献上するなどひどい展開になったが、彼は「野球はかならず最初から最後まで見る」という信念があるらしく、ベイ大敗のゲームを最後まで見てきた。
 ゲーム後の彼の感想、「キミのヨコハマはもっといい選手をそろえないとダメだね」。「もちろんそれは痛いほどわかってるんだけども、親会社が……」と僕は愚痴をタラタラ連ねた。それにしても、日本野球初観戦のノルウェー人に同情されるプロチームって……。
 「まあ、こういうひどい試合は、ボクもA's(アスレチックス)で慣れてるよ」。慰めなんだかどうだかわからん言葉で締められ、「でも、とても楽しかった。また行きたい」。僕もそれに応じて「こんどはぜひオークランドで、A'sとマリナーズのゲームを見ましょう!」。そしたら、彼も乗り気だった(笑)。
 今シーズンはもうそろそろ終りだけど、来年は「アメリカでノルウェー人と野球観戦」なんて体験ができるかもね。
 
 (13:10)