夢

 今朝。11年後のそのつどいに、参加してきた。
 会場は神戸市役所横に広がる東遊園地という公園。午前5時頃に会場へ着くと、すでに数えきれないほどの人々が集まり、あるいはロウソクに火を灯し、あるいは数珠を手に祈り、あるいは写真を撮り、あるいは語り合っていた。
 涙の人もいるが、全体的に笑顔が多かった。悲愴感ではなく明るい未来への希望……月並みな表現をすればそうなるだろうか。より積極的な言い方をすると、そこは厳粛でありながらも、元気だった。弔うという気持ちに加えて、“忘れずに、伝えていこう”という前向きの決意が満ちていた。これらのことは、現地でじかにその空気に触れると、安心し、頼もしく、また力強くも感じた。大地に刻まれた記憶は地球が覚えているが、人間の記憶は、人間が覚えていなければならない。
 人波はまた次から次へとやってきて、増えていった。当時まだ生まれていなかった小さなこどもを連れてきた若い親もたくさんいた。年老いた人々、中学生や高校生、芸能人やテレビキャスター、マスコミ、ボランティアたち。そして僕のような旅人もきっといたことだろう。
 午前5時46分、一斉に黙祷を捧げた。記帳して受け取った一輪の白い菊を献花し、ボランティアが配るコーヒーでからだを温め、炊き出しの豚汁をありがたくいただいた。
 亡くなった人の数だけあるという、竹筒の中のロウソク。竹筒には、命、追悼、祈り、絆、夢……といったさまざまな言葉が書かれていた。そしてその6000本を超える光が、巨大な「1.17」という文字を描きだしていた。
 明るくなり始める7時頃まで、僕もそこにいた。
 
 (15:14)