半月

 19時頃、六本木で見た月はくっきりと明るい見事な半月だった。
 いま、皇居のお濠端から見る月は、ぼんやりと輪郭がにじんだまあるい半月になっている。
 雲のせいで明度も衰え、さっきまでの冴え渡る姿はどこへいったやら、などと愚痴りたくもなるような、鈍く暗い色だ。この月が吉兆か凶兆かと二者択一で聞かれたならば、世の多くの人間が「あれは不吉な月だね」と感じざるをえないことだろう。
 
 この秋初めて、秋冬用の帽子をかぶった。
 僕の髪は絹糸のように(は言いすぎだけれど)やわらかいので、帽子をかぶって出かけるとぺちゃんこになる。もう少しゴワゴワしてくれていたらよかったのにと思うけど、まあいいかとも思う。
 しばし歩いて東京駅丸の内口に着いた。昼はあたたかいことがあっても、さすがに夜になるとそろそろ寒い。帽子もあるとあたたかい。北海道では平野部の都会でも雪になる季節だし。
 でも「ヨロンはまだまだ半袖ですよ」と、南から便りが届いた。
 
 (22:16)