佐渡の初日

新潟の佐渡汽船乗り場


 ダイヤルアップがどうもつながらんので携帯から。
 両津港から30分くらい歩いて、夕方4時半頃に宿へ着いた。両津はちょっと前まで「両津市」という名前で、自分にとってもその印象が強いのだけど、いまは佐渡の大合併が行われて「佐渡市」になっている。名前が変わって心機一転かと思いきや、至るところに「両津市●●」という看板がまだ残っている。街は相当元気がなくてさびれている。とにかく、人がいない
 朝、佐渡へ行くことに決めた時点で港に近い宿をネットから予約したのだけど、出発前にロイヤルホストでお茶していたらその宿から電話がきて、なんか事情によりきょうはダメだとのこと。で、代わりに宿を紹介してもらったら、結局、かんぽの宿になった
 いちおうちゃんと温泉である。最初に予約した宿がダメになった理由は電話でよく聞き取れなかったけど、パソコンがどうのこうのと言っていた。もしかして例のトレンドマイクロ事件(ウイルスバスターの自動アップデートで多数の企業、自治体、個人のPCがおかしくなったやつ)の影響があったのだろうか
 宿の場所は全然調べていなかったので、そば屋で聞いた。そこのばあさん曰く、「歩いてすぐだよ」と。で、港から歩くことにした。宿まで歩く道すがら、人とほとんど会わなかった。到着直前の5分ほどを除けば住宅もそれなりにあったのに、見かけた人はばあさんが2人と若い男性が1人、あと犬を散歩させる主婦風の女性が1人だけだった。こういうところでは、ばあさんと会うことが多い。えっちらおっちら自転車をこいでいたりする。速度は遅いが、たぶん僕より体力はあるだろう
 島とはいえ面積は東京23区の1.5倍、周囲は300キロくらいあるから、広い。景色も島とは感じられないような雄大さがある。両津港のすぐそばには加茂湖という大きな湖がある。ここは汽水湖(淡水と海水が混じった湖)で、湖面には佐渡名物のカキの養殖イカダが無数に浮かんでいる。残念ながらカキのシーズンはもう終わっているので、今回の旅では食べられないだろう。その加茂湖越しには、まだ雪を頂いた山々が連なっている。佐渡は「エ」の字をひしゃげさせた形をしているが、その「エ」の字の上の横棒にあたる位置にある連山だ
 山には雪がたくさんあるけれど、さっきも書いたとおり佐渡は基本的にイメージよりも全然暖かい。新潟県内でもいちばん暖かい土地だという(もちろん山の上は除く)。福島の三春近辺や新潟市内ではまだまだサクラも満開の感じだったのに、ここでは葉ザクラがほとんどになっているあたり、そういう気温的な部分の表れでもあるだろう
 そんな景色を眺めたり、誰もいない静かな神社に寄ったりして、うっすらと汗をかきつつかんぽの宿に着くと、まだできて数年ということで施設は新しく、まあ悪くない感じだ。フロントのお姉さんも、高校を卒業後にまわりの友達はみんな東京に出たけど自分は地元に残ってここで働き、まだ彼氏もいないちょっぴり薄幸気味な女性の役を演じる前田亜季に似ていなくもない風情で、微妙にかわいらしい。歳は25前後だろうか。基本動作はうつむき加減だから、小林さんや川越さんとは180度違う。TDLのワタセさんもたぶん正反対系だろう(会ったことないけど)。言葉が詰まって自分のほっぺを軽く叩くところ、歯を矯正しているところもまあ、地方の地味な女の子の代表という感じで、全体としては悪くなかった
 できたばかりで新しいと聞いていたとおり、たしかに建物は新しくて心地よい。部屋に入ると、眺めもすばらしい。奥に例の雪を頂いた山々、その手前に加茂湖が悠然と広がっていた。かなり強引だけど、どこかカナディアンチックな優雅さを覚えさせるような景色だった
 展望風呂がもう開いているので、明るいうちにこの景色を風呂からも満喫したいと思い、部屋に入ってほどなく風呂に行った。時間が早いので、一人だけいた先客も僕が入るとすぐに出てしまい、この贅沢な景色をけっこう長い時間独り占めした。くつろいだ。山と湖に向かって広がる大きな窓の前にすっ裸で立ったりもした(笑)。結局、僕が出るまで誰も入ってこなかった。
 
 風呂から上がり、部屋に戻ると疲れが一気に出た。14日以降、ほんとほとんど眠れていないから、いいかげんピークがきたんだろう。素敵な風呂上がり、窓を開けて外の空気を感じながら畳の上にゴロンと横になったら、そのまま眠ってしまった。夜7時すぎ、宿の人がふとんを敷きにきた声で目覚めて、8時頃から夕食を取った。で、いまはこうして携帯でこれを書いている。携帯で長文を書くのは、ほんと疲れる。 (23:39)