母島へ

 今朝は7時半のフェリーで、母島へ向かったのだった。
 朝の父島は、朝日が集落の屋根屋根に反射して美しく、こりゃあきょうはいい天気かなと思わせた直後、6時半くらいからパラパラと雨が降り出した。
 母島行きの桟橋に着くと雨もやや本降りになってきたけど、出航の頃にはまた小雨になり、沖合に出たらやんだ。それどころか次第に晴れに。さわやかな青空のもと、父島の島影だけがどんよりとした雲に覆われていたのだった。
 父島と母島の間の海は、クジラとイルカの宝庫。ただザトウクジラの南方出張は12月から5月上旬くらいまでで、この海域のクジラたちはそろそろ北の海に帰り始めている。(イルカは年を通じてOKだそうだ)
 こりゃ今回はクジラ見えないかなと半ばあきらめ、デッキで風と若干の波しぶきに吹かれながら知らずウトウト。出航して1時間ほどか、はっと目を覚まして振り向くと、デッキには僕ひとりで、しかも視界の向こうの海で一頭のクジラがブリーチ(海面から跳ね上がる)しているのが目に入った! ホエールウォッチング船ではなく定期フェリーだから、クジラがいるからといって停船するわけじゃない。ははじま丸の小さな船体は太平洋上を疾走し、クジラがいたポイントもどんどん遠ざかる。慌ててズームレンズをグイと伸ばし、クジラがまだいると思われる辺りに焦点を絞った。
 とはいえ船は遠ざかるし、外洋で大きく揺れているしで、遠くの海上で跳び上がるクジラの姿をタイミングよくフレームに収めてシャッターを切るのは至難の業。結局、ブリーチは3、4度目撃できたけれどこれらは撮れず、なんとかブロー(潮吹き)だけは一枚キャッチすることができた。
 父島を出て2時間10分で、船は母島の沖港に入った。この島の集落は父島に比べてもはるかに小さく、父島ではさほど得られなかった離島感をヒシヒシと感じられる。おまけにきのうまでの父島とはちがって湿度が高く、気温もやや高い。沖縄や奄美のことを思い出し、やっと南の島に来たなという感懐を新たにしたのだった。(続く)
 
 (23:27)