小笠原3日目の悲劇

 16日午前に父島へ着いて3日目。きのうは小舟で南島に渡ったりなどアクティブに動いた一方、きょうは朝から豪雨で、昼メシやおやつの買い物で出かけた以外はほぼ一日、宿ですごしたのであった。
 とはいえ、写真を整理したり、仕事関連の本を読んだりと、これはこれで充実時間。小笠原滞在はまだまだ長いし、よろしい休養になったと思う。めでたい。
 豪雨は午前と午後にそれぞれ。激しい雨に加えて風も強く、とてもじゃないが外には出たくない感じ。でもいい具合に昼前にはいったん止み、昼メシに出るにはジャストタイミングだった。
 その昼メシは、IGにもアップしたとおり、島伊勢海老をベースとしたカレーに、サラダ、スープのセット。1000円。物価の高い小笠原では、悪くはない。量的にはややおとなしめだったけれど、伊勢海老の風味がカレーの中に満ちていて口に含むとやさしく広がり、味はなかなか素敵だったんだ。
 午後の雨は夕方前に止んだので、これも夕飯にはいい感じ。きょうもなんだかんだいっていい一日だったね!……と結論づけそうになった矢先、悲劇が起きた。悲劇。そう、ディナーである。
 きょうは休肝日。なので呑み屋の選択肢はない。すごく腹がへっていたので、ある程度ガッツリ食おうということになり、同行のrockoh3と相談して、とある店に入る。
 僕が注文したのは麻婆豆腐定食、rockoh3がホイコーロー定食。厨房にいるのはオジサンひとり。調理は彼ひとりだから、当然同時には作れない。まず、しばらくして僕の麻婆豆腐が出てきた。
 カウンター越しに登場した麻婆豆腐をひと目見た瞬間、僕もrockoh3も絶句……たぶん顔は蒼ざめていたと思う。
 現れた麻婆豆腐は、見た目がオレンジ色だった。なぜオレンジかといったら……そう、油。油だらけ。たいして量もない豆腐が、そのオレンジ色の海の上に、消えそこねたかのようにさみしく点在している。麻婆豆腐だから当然ひき肉もあるよなぁと誰もが思うはずだけれど、それがほとんどない。数えられるほどしか入ってない……
 要は、豆腐の油漬けといった風情。レンゲですくい、なるべく油を口に入れないように工夫して食べるしかない。続いて登場したホイコーローも、キャベツいっぱいなのはいいとして、肉がやはり二切れか三切れしか入っていないという。そしてその周囲には、やはり鮮やかなオレンジ色のリングが……。おまけに付け合わせのザーサイも、何年も前に封を切られたような顔をしていて……
 いくら小笠原は物資が厳しいからといって、あの油漬けの料理と肉類のあまりの少なさは、ちょっとありえない。到着以来ここまでは、島寿司とか、地魚系の料理とか、きょうのランチのカレーとか、ほぼいいものにばかり当たっていたから、これには二人ともショックで意気消沈。無言で食べ終え、店をあとにしたのであった。
 ま、旅にトラブルは付きもの。これもいい経験っていやぁそうなのか? ……んー、それはないな、あの麻婆豆腐とホイコーローだけは、ここがいくら小笠原だろうが、ない。
 気を取り直して、あしたはまたうまいものを食おうっと……
 
 (23:14)