半袖Tシャツの秘密

 ほんと寒くなったねぇ。本格的に冬だねぇ。
 そりゃそうだよねぇ、もうあと2日で討ち入りなんだものね。
 赤穂浪士の討ち入りが冬以外の季節にあったら、さすがに萎える。でしょ。
 
 そんなここ最近の寒さではあるけれども、見ましたよ、きょう、例によって、あれを。半袖姿のアメリカ人を。
 アメリカ人の男って、どうして寒くても半袖Tシャツなの? 正月の浅草寺で目撃したこともあるもの。いわゆる、見てるこっちが寒くなるってやつ。
 女性はけっしてそんなことないのに、男は、半袖多いよねぇ、冬だろうがなんだろうが。
 
 僕はかつて、あれはやっぱりアメリカ人ってやつらが鈍感だから半袖でも大丈夫なのだろうと勝手に決めつけていた。
 だけどもよく考えたら、ひと口にアメリカ人って言ったって、人種はいろいろいるわけでしょう。白人、黒人、アジア系、ヒスパニック、いろいろいるわけだ。だのにみんな、アメリカ人として日本にくると、冬の寒い日でも半袖Tシャツを着て街を闊歩する。これは、おかしい。アメリカ人=鈍感説は、どうも成り立たない気がしていた。
 そんなある日、僕ははたと気づいた。そうか!と、膝を打ったという表現のとおりに本当に膝を打った。
 そう、きっとアメリカ人が冬でも半袖Tシャツなのは、みんなスーパーマンになりたいからなんだ、と。
 スーパーマンへのあこがれが、アメリカ人の男をいつも半袖Tシャツ姿にさせているんだ、と。
 それならば、女性はちゃんと着てるのに男だけ半袖Tシャツというところも説明がつく。
 そうだそうだ、それにちがいないよ、きっと。
 
 アメリカ人にとっては、あのスーパーマン、どうしようもなくカッコイイんだろうねぇ。
 僕はべつに全然、あれがカッコイイとはとてもじゃないが思えないんだけど。
 ただし、空を飛べるのだけは、やっぱりイイかもと子供みたいなことも思い始めた。
 いや、正確にいえば僕は、子供の頃はそんなに空を飛びたい欲はなかった。むしろ成長して大人になって、それも成熟してオッサン年齢に入ってから、ああ、そういう人生も悪くないかもなぁと思い始めた感じ。
 となれば、なんだ、僕もこの先スーパーマンにあこがれて、冬でも半袖Tシャツを着始めるときがくるんだろうか。
 できれば、それはこないでほしいなぁと、寒い夜道で家路を急ぎながら思うのであった。
 
 (23:57)