気になる女

 先日、ジョン・キューザックはけっこう好きだという話を書いた。あの顔がいい。でもあまり素直にいいと言いたくもないなぁ、と。
 それでは、いまいちばん気になる女優は誰かといったら、文句なしで木村多江さんである。これはもう大きな声で、そう言える。
 とにかくこの方、本人も自覚しているらしいのだけれども、とにかく不幸な女の役をやらせたら右に出るものはいない。最近の作品でも、「沈まぬ太陽」や「ゼロの焦点」で本領発揮。それぞれちがうタイプの不幸を、見事に演じていた。
 「ゼロの焦点」は、顔で演技をさせるシーンが目立った。アップにして、目や、唇や、頬で語る。彼女の顔の演技力は、言うまでもなくすばらしい。顔見てるだけで泣けた。中谷美紀も迫力があった。評価も高いようだ。
 “三大女優の競演”で唯一、物足りなかったのは、やはり広末さん。このひと、存在感はあるのだけれど、セリフは微妙だし、何より顔の演技は正直厳しい。ヒロスエ自体は僕はけっこう好きなので、応援したいところではあるんだけど……。
 きょうは木村多江さんの話だった。実は、歳が近い。たった2つちがい。その意味では妹みたいな……いやそんなことないな。向こうのほうがきっと全然オトナだな。
 ともあれ「ゼロの焦点」は、薄幸の木村多江を見るために行ってもいい。もちろんその姿を目にすることで、わずか60年と少し前に日本が身を浸していた状況と、それに先立つ世界的な悲劇に、人はフォーカスを合わせることだろう。
 
 (23:48)