カゴンマの夜と昼

桜島 桜島というのは、何度見ても実に見事な山だと思う。
 港でしばし眺めていた。飽きない。
 
 きのうの夕方、種子島西之表港を出る高速船で鹿児島に戻ってきた。
 天文館(鹿児島の繁華街)のホテルにチェックインしたのは夜7時前のこと。この時間から、しかも天文館ですることといったら……そうもちろん呑みにいくこと。天文館の街をぶらつき、なんかよさそうな店にふらっと入った。
 カウンターに5、6人、あとは奥の座敷に数人座ればいっぱいになるくらいの小さな呑み屋。先客は3人のおじさん。僕も含め、みんなカウンター。
 おじさんたちの話を聞いていると……「会長」「社長」「理事長」と、お互いがお互いをそう呼んでいる。そういえば、と店内を見回すと、お品書きは貼ってあるけどどこにも値段が書いてない。あれ、これもしかして、すんごく高い店に入っちゃった?
 財布の心配はともかく、呑み始めるとおじさん3人とすぐに仲良くなり、話も盛り上がる。料理や芋焼酎もご馳走してくれる。僕も調子に乗って、呑む。
 そのうち、おじさんたちは次の店に行くとかで先に出ていった。残されたのは、店の主人と僕だけ。主人はおじさんたちが置いていった一升瓶を「全部呑んでいいよ」、さらに「(厨房に)入って自分で生ビールついできて」。もう焼酎モードに入ってたからビールはいらなかったんだけど、しつこく言うので、一杯だけついできた。んであげくの果て、「きょうは酔っぱらった。もう閉める」と言う。時間はまだ8時半。そのまま主人は奥の座敷で寝てしまった。
 と思ったら10分くらいで起きてきた。目がかなり泥酔している。では僕もそろそろ……と額におびえつつお勘定をお願いすると、主人「そうだなぁ。じゃあ、1000円」。
 ン、1000円? ほんとに1000円でいいんスか?
 「1000円でいいよ」
 やっぱり10000円と前言撤回されても困るので、主人の気が変わらないうち、早々に店を出たのだった。泥酔してたとか寝ちゃったとか主人にとって問題もありそうなので、この店の名前は伏せときましょ。
 
 んでもって、店を出たはいいけれど、まだ飲み足りない。そこで近くの賑やかな大衆酒場風の、「郷土料理」の看板を掲げる「おはし」という店に入った。ここはほぼ満員の大入り。ちょうどカウンターが一席あいたところだったので、主人の真向かいあたりに座る。
揚げたてさつま揚げ メニューを見ると、イワシ料理をメインに、さつま揚げとかさつま汁とかキビナゴとか、鹿児島の郷土料理がいろいろとある。ひとまずイワシのステーキとさつま揚げと、あと芋焼酎のお湯割りを頼む。
 さつま揚げ(右の写真)はすり身を手で豪快にでっかく切り取り、目の前の油で揚げる。しばらくして文字通り揚げたてのさつま揚げが出てくる。これはもう、うまくないわけがない。あつあつ、ほくほく、やっぱさつま揚げは揚げたてが最高だね。
キビナゴ汁 締めに、キビナゴ汁を注文する。出てきたのは、お椀サイズの汁もの。こまかくつぶした豆腐の汁の中にキビナゴがゴロゴロと入ってて、これが、写真ではわからないだろうけれど、ビックリするくらいにうまかった。最初のひと口でうますぎることがわかったので、すぐに白めしも注文。芋焼酎のお湯割りも盃を重ねて、いい頃合いに、店をあとにした。
 あのキビナゴ汁は、またすぐにでも食いたい。
 
 (18:46)