南十字星

 午前3時半に起きて外に出ると、よく晴れていて空一面に星が見えていた。これはいけるかもとうきうきしながら宿近くの暗闇の中まで歩いていって、4時ちょっと前から南十字星みなみじゅうじ座)の観察を開始。気温は夜中になってもあまり下がらず、風もほとんどなかったので、長袖Tシャツで十分だった(波照間気象台の数値では午前3時で21.1度、午前4時と午前5時がともに20.6度あった)。
 周囲が真っ暗なポイントまで行くと、十字の上の3つの星はすぐに確認できた。けれど南の水平線付近に雲がかかっていて、いちばん下のアクルックス(みなみじゅうじ座のα星)がどうも見えない。十字の左に煌々と輝いているはずのケンタウルス座のα星とβ星、リギルケンタウルスシリウスカノープスに次いで全天で3番目に明るい。太陽からもっとも近い恒星で、これも本州の平地では見ることができない)とハダルも気配がなかった。
 時間は刻々とすぎ、南中時刻(南でいちばん高くなる時間)の4時45分頃を迎えても、状況は変わらず。上の3つはずっと見えているんだが、いちばん下のアクルックスだけがどうしても姿を現さない。なんとか頼むと祈りつつ、きょうはムリかなとだんだんあきらめモードに入ってきた。
 しかしながらこの状況も5時をすぎた頃から少しずつ変化してきた。リギルケンタウルスが時折見えるようになってきたのである。ということは……水平線近くの雲が晴れるタイミングも出てきたというわけで、もう少しがんばれば、アクルックスも見えてくるかもしれない。ただ問題は、時間である。すでに南中時刻を50分近くすぎている。これ以上たつとアクルックスは水平線の下に沈んでしまうし、それに空もだんだん明るくなってくる。と、そのとき!
 真っ暗な中、もちろん周囲に誰ひとりいない中で、思わず「おー、きましたね!」と声を出していた。一瞬見とれて我を忘れた後、セッティングしていたカメラのシャッターボタンを押す。タイマーで2秒後に撮影が始まり、60秒間の露出(このカメラではこれが最長)。ISO感度は前日の撮影結果から、星の写り具合とノイズとのバランスを考え1250に設定してある。
 こうしてようやく、2時間弱の粘りの末に、サザンクロスの4つの星をすべてカメラに収めることができたってわけ。撮影した写真は計12枚で、そのうち最後の12枚目だけが4つめの星をとらえることができたのだから、本当にギリギリの勝負だった。この12枚目の撮影後、数分もしたら、アクルックスはふたたび姿を消していた。いやはや、運がよかったことよ。
 で、小さい星座なので南十字星の周囲だけトリミングしたやつをいちおう載せときます。サザンクロスの形はわかるんじゃないでしょかね(念のため、中央やや右の縦長の十字です)。
 
 波照間で見た南十字星
 (6:53)