興奮の夜、大変な朝

 タイヘンな朝が過ぎ去った。日本時間12日朝、現地時間11日夜。そう、松坂大輔の本拠地ボストン・フェンウェイパーク初登板、そしてイチローとのメジャー初対決である。
 結果はご存じの方が多いと思うが、松坂は3失点、イチローはノーヒット。ひとり城島だけが気を吐いて、松坂から二塁打2本と大活躍だった。
 初回先頭イチローの打席は、さすがに震えがきた。松坂の本拠地初登場でフェンウェイパークはプレイボール前から異様な雰囲気。客たちはすでにスタンディング・オベーションとなっている。
 最初の一球を投じたときはスタンド中でフラッシュが瞬いた。その最初の打者が、イチロー。こんなによくできたストーリーがあるだろうか。
 この打席について、イチローは試合後に「ジーンときた」と語った。松坂も「必ずアウトにしたかった」と話している。イチローにとっても松坂にとっても、そして多くのファンにとっても、それだけ感慨深いシーンだった。
 しかしながら、試合のほうは残念なことにそこまで劇的にはならなかった。
 松坂は7回8安打で3点を失い降板(先発投手としては合格点の範囲だが)。開幕以来まだ調子の上がらないイチローも松坂の前に4打席無安打、ボストンのリリーフ陣にもヒットが出ず、この日は5打数無安打に終わった。おまけにマリナーズのヘルナンデスがあわやノーヒット・ノーランの快投を見せ、ゲームの華も持っていかれた(主役はあくまでも松坂だったが)。
 
 松坂の本拠地初登板がマリナーズ相手だとわかったとき、正直、いろいろと理想の形を夢想した。
 最初だから松坂に完璧に抑えてほしい気持ちもあるけれど、やはりイチローには3安打、4安打、5安打と大爆発を期待したい。城島にも打ってほしい。そこで、バランスから見て考えられる最高の結果は、松坂が7回まで0点に抑え、イチローは松坂に2打数1安打1四球1盗塁、松坂降板後にイチローの2本目のヒットと城島のホームランが出て、最終的に松坂が本拠地初勝利……まあそんなところだった。
 実際にはすべてが裏目裏目に出てしまい(城島の長打も松坂からだったし)、松坂の勝利もイチローマルチヒットも見られなかった。その意味では消化不良のゲームであったけれども、でもやはりこんな対決を見ることができたのは、ほんと興奮したし、感動もした。
 
 松坂の大リーグ生活は、まだ始まったばかり。もちろんイチローも、2004年のあの大記録を今後も2度3度と自ら更新してほしい。城島にはメジャー最高の捕手になってほしい。
 イチローも言っていたし、松坂の投球内容にも表れていたように、きょうはイチローも松坂もお互い意識しすぎたところがあるだろう。最初だから仕方ない。ひとまずその一つの“儀式”が済んで、二人にとって本当の開幕はこれからかもしれない。
 
 (14:35)