大連食紀行

 今回の大連の旅を、食を中心に綴りなおしてみる。
 
 大連に着いた大晦日(17日)、夕方に街角の小さな店で食べたのが「過橋米線」と呼ばれる麺類。もとは雲南料理で、大連でも流行っているという。
過橋米線 まず、鍋にグツグツと煮えたスープだけ出てくる。続いて羊の肉とモヤシなどの野菜、湯葉を細長く固めたようなものが具として登場し、スープの中へごそりとイン。最後に出てきた白い麺もスープに入れて、かきまぜて食べる。時に山椒油や肉味噌・辛肉味噌ものっけて食す。粉系好きも満足の食感と、すてきな香り。夕食前なので軽く済ませるつもりが、ついつい七分方食べてしまった(かなり食べてもまだ七分方。つまり量がけっこう多い)。
 「過橋米線」という名前の由来がおもしろい。昔、雲南科挙*1に挑戦する男がいた。池の真ん中にある離れでひとり勉強する男に、その妻が夜食の差し入れで麺を運ぼうとした。しかし橋を渡っていく間に、麺がのびてしまう。そこで妻は、まず冷めにくいように土鍋へ入れたスープを持っていく。続いて具を、最後に麺を運んでいったという。それで、「過橋」の麺というわけである。
 その夜は、Kさんの知り合いの日本人経営居酒屋(営業は春節でお休み)で、店長、Kさんの部下のYさんと4人で三線をかき鳴らしながら数時間、白酒や薩摩の芋焼酎を楽しんだ。それから、23時頃に星海広場(海沿い)のマンション21階にあるYさんの部屋へ移動。真下の広場で打ち上げた花火の火の粉が窓から飛び込んでくる、ダイナミックな年越しを過ごした。音の凄さは、すでに書いたとおり。空襲のようでもあるし(空襲を体験したことはないわけだが)、大連の街全体が誘爆しているかのようでもあった。しばらくいてKさん宅に移動し、また明け方まで酒を呑んだ。

 
 2日目、旧暦の新年を迎えた18日は、これもすでに書いたように遅い朝食を新疆ウイグル自治区の羊料理でスタート。蒸した羊肉のほか、羊の入ったパスタみたいな麺類や、肉汁のしみたパンのようなものをいただく。
 昼を軽く済ませて、夜は地元大連の海鮮料理。その前にKさんと僕は「湯本」という温泉(鉱泉)に出かけた。ここは日本人が多くくるところらしく、いたるところに日本語の表示がある。日本語も通じる。まあ、旧満州時代から日本との関わりが深く、対日感情もよい大連には、そもそも街のいたるところに日本語の文字があるんだが。ともかくここでゆっくり風呂に入り、さらに1時間半のマッサージ(普通の)を受けて、夕飯を取るお店に向かい、Yさんと合流した。
 これはかなり豪華なお店で、まずだだっ広い1階のフロアで生きている海の素材などを食べたいだけチョイスする。伊勢エビや巨大な貝類、数々の魚、見たこともない奇妙な生き物と、実に多彩な品揃え。選んだら、上階の個室に入る。酒など呑みつつしばらくすると、選んだ素材が各々調理されて個室にどんどん運ばれてくるシステム。
海腸 エビの躍り食いや生ウニ、カエルの炒め物もよかったけど、中でもおもしろかったのが「海腸」という名のシロモノ(右の写真)。名前のとおり何かの腸のごとく見えるんだが、これはこれでそういう生き物らしい(日本には該当するものがいないとのことだが、あえて言うなら「海ミミズ」らしい)。生のまま、わさび醤油で食った。
 生のエビの躍り食いは、生きてぴょんぴょん跳ねてるエビを手にとり、頭をもいで、皮をむいて食らう。うまい。カラダを食われたあとでもアタマだけ動いているからおもしろい。
 食後はまた3人でKさん宅で呑み。そうして2日目の夜は更けていった。
 
   生ウニ

   生ウニ。安かった。味はフツウ
 
   生エビの躍り食いのあと

   生エビを躍り食いでたらふく食った残骸。

   この状態でも頭がヒクヒク動いていた
 
 
 3日目(19日)は、午前中から昼にかけて旅順へ単独行(19日の項参照)。
 大連に戻ってきて、昼飯には屋台で売ってたお好み焼きのようなタコスのようなものを食べた。名前はわからない(笑)。で、スーパーに行って地元のビールを何本か買って、飲んだ。
火鍋 夕飯は、Kさん推奨の四川料理屋で、例によってYさんもまじえ3人で。大連限定麒麟ビールや白酒をいただきながら、羊や牛肉を辛いスープにしゃぶしゃぶして食べる「火鍋」をたらふく食した。辛いが実にうまくて、食べてる最中から、また来たいと思いつづけていた(笑)。ただし、店全体に漂う空気や目の前の鍋から立ち上る湯気のせいで、全身が火鍋の匂いになった。
 正月2日のこの夜は、店から近い星海広場で花火大会があって、食事中その音がひっきりなしに続いていた。昼間は過去2日にくらべ数が減ったと感じていた爆竹も、夕方からはまた一気に増え、街中に響き渡っている。会話がその音で聞こえなくなるのは普通のことだが、道を行くタクシーが火を噴く爆竹のすぐ脇を、火花をうまくよけながらすり抜けていくのもおもしろかった。
 火鍋のあとは、またもやKさん宅で3人で呑み。お茶で煮込んだ玉子をつまみに、白酒や、中国の長城ワインなどを呑んだ。ギターを弾きながら3人で唄った。
 
 (23:49)
 
 

*1:官僚登用のための試験のこと。超難関で知られる