20年後の夢物語

 高校生の頃だが、同級生のM沢くんとよく「メジャーに行っても活躍できるのはどの選手かな」などと話していた。バースや落合が三冠王を連続して取っていた頃の話。日本のトップ選手がメジャーへ行ってもある程度はできるだろうと思っていたが、やはりまだまだ現実的じゃなかったし、全然、夢物語だった。
 M沢くんとは仲がよくて、1986年の春休みには一緒に東北地方へ各駅停車で旅したりもした。この年の秋にメッツのデーブ・ジョンソン率いるメジャー選抜が来日したとき*1、“メジャーでもやれる選手”としてジョンソンが何人かの名前を挙げていた。くわしくは覚えていないが、秋山と落合は入っていたはず。僕もM沢くんもそれを聞いて心底ワクワクし、日本人メジャー選手への夢をふくらませたものだ。
 あれから20年ほど経った。きょうもメジャーを見れば、松井秀喜オークランドマカフィーコロシアムのセンターオーバーに強烈な先制弾を打ち込み、井口はインディアンス戦で二塁打を含む3安打の固め打ち。マリナーズの新コンビ、イチローと城島もともにヒットを放ち勝利に貢献した。
 もちろん、野茂に始まる日本人投手のここまでの活躍は言わずもがな。きょうもブリュワーズの大家がパイレーツ戦で今季初先発し、7回を2失点に抑える好投を見せている。WBCを締めた大塚も新天地レンジャーズできのう今季初登板。「日本人選手がメジャーへ行って活躍してほしいな」……20年前のその夢は、もう当たり前すぎるくらいの現実になっているわけだ。
 それでも、いまでもやはりふと振り返ったとき、その夢が現実の出来事となったことのすごさを静かに噛みしめている。すげぇぜ、ニッポン人よ! と。今シーズンもきっと海の向こうから、何度も何度もワクワクと感動を味わわせてくれるに違いない。
 そして……そう、あとは、ホワイトソックス・野茂のメジャー昇格を待つだけだ。やっぱり、彼がいなければ。
 あ、松井稼頭央もそろそろなんとかしろ(笑)。
 
 (22:20)
 
 

*1:メンバーはオリオールズの鉄人カル・リプケンパドレス安打製造機トニー・グウィン、“ミスター・カブ”ことカブスライン・サンドバーグ、このシーズン新人王に輝いたアスレティックスホセ・カンセコ、この年サイ・ヤング賞を受賞したアストロズマイク・スコットナムコファミリースタジアムではたしか“ばふぃ”という名前だったブルージェイズジェシー・バーフィールドカーディナルスの守備の神様オジー・スミスなど、実にそうそうたる面々だった。ジョンソンのメッツもこの年ワールドシリーズを制覇している。シーズン終了後の秋に行われる日米野球はそれまで単独チームでの来日が基本だったが、この年以降はメジャー選抜としてやってくることになる