新潟
小学生の頃、恐竜が大好きだった。
大好きとはいっても、恐竜はサイやキリンやシマウマとは違う。動物園に行けば見られるというものでもないから、もっぱら図鑑の中の世界である。けれどたまに大人(親)をそそのかして上野の国立科学博物館に連れていってもらったり、あるいは家族旅行や海水浴で出かけた先で、化石が取れないかとノミやトンカチで岩を叩いて削ってみたりしていた。うちは大工だったから、そういう道具はいろいろあった。
この恐竜と同じように、天文や地理といった分野にもこどもの頃から深い興味を持っていた。たとえば地理ではとにかく地図を眺めるのが好きだった。一時期、日本地理パズルに夢中になったこともあった。
これは、日本全土を都道府県ごとのピースに分けたもの。幼時のことなので記憶にカン違いがある可能性はあるが、北海道以外の各府県は1枚ずつのピースで、北海道だけは1枚ではデカすぎるので支庁別のピースになっていた*1。
余談。「支庁」というのはいまいち定義があいまいなもので、基本的には都道府県庁の支所となる出先機関的な意味を持っているのだが、北海道においては単なる道庁の支所というレベルを越えて準地方自治体のような扱いになっている。北海道のものとは異なる出先機関としての支庁制度は、沖縄県や鹿児島県、東京都、島根県、長崎県の離島部が知られている*2。このほかたとえば山形県には「総合支庁」という名称で設置されているし、兵庫県の「県民局」も似たようなシステムだ。千葉県にも昨年春まで支庁があったが、現在は「県民センター」という組織に衣替えしている。で、北海道の各支庁はゆうに都道府県級の(あるいはそれ以上の)面積を持っているから、日本地図パズルでは堂々たる独立ピースになりうるわけ。
さて、話を戻すが、そうして日本地図パズルを組み立てていくと、各都道府県の面積の違いというのが文字通り手に取るようにわかる。
東北地方の各県や新潟、長野、岐阜などはほんと大きいし、大阪、香川、東京、神奈川といったところはほんと小さい。この差を見ていると、面積が大きな各県はブロントサウルス(アパトサウルス)やブラキオサウルスといった巨大な草食恐竜に見えてきた。とくに岩手、福島、長野、そして新潟はバカデカく、各県のピースでメンコを始めると、風圧すら起こせないミニピースの東京や大阪や神奈川はどうあがいても勝ち目がなかった。
べつになんの脈絡もなく幼い頃のことを思い出したが、そんなバカデカいピースのひとつである新潟県は、中越地震からきのうで1年が経過し、これから2度目の冬がやってくる。いまだに9000人を超える被災者が仮設住宅で暮らしているという。
面積では6分の1弱、人口では5倍強。吹けば飛ぶよなミニピースに1000万を超える人間が住む東京都にとって、大地震は間違いなく他人事ではない。
(19:30)