歯医者とこどもとビートルズ

 いろんなひずみの原因のひとつは親が子を怒らないことにあるというのはよく言われていることだが、少なくとも一側面としては事実だろう。今朝もいつもの歯医者で、小さなこどもが大声を出してソファーの上を跳ね回っているのに、親と思われる男性は「ほら、よしなさい」と半分笑いながら軽くいさめただけだった。
 過保護な親なんていうのは昔からいただろう。子を怒らない親というのも、まあいたにちがいない。ただ僕の場合は、悪いことをしたら人前でも普通に怒られたし、時には叩かれもした。学校の先生に殴られたり、近所のおじさんに怒られたことだってよくある。大人に叩かれたらほんと痛かったし、大人に怒られるのも怖かった。そうやってこどもなりに、社会というものを学んでいった。大人に対して文句を言うことはあっても、大人をバカにすることはなかった。
 僕はこどもがいないので、いまの時代の親子関係がどうなっているのかということは、テレビや新聞、ネットなどで報じられている以上のことは知らない。けれど街で頻繁にああいった光景に遭遇していると、いまのこどもはこども時代のいつ真剣に怒られ、叩かれ、殴られるという経験をするのだろうか、いつ大人を、そして他人を尊重することを学ぶのだろうかと、現状をよく知らないながらも不安に感じ、そして憂慮してしまう。当然この時代にだって、子に厳しい親というのも存在してはいるのだろうけれど。
 
 歯医者では、治療中ずっとビートルズが流れていた。初期から後期まで織り交ぜて流されていたが、最近は後期の曲を聴く機会が多い自分にとって、「リトル・チャイルド」「アイル・ゲッチュー」「サンキュー・ガール」といった初期・前期の曲は、なかなかに懐かしかった。
 こどもの頃から聴きつづけているビートルズも、その時代時代によって、よく聴く年代、あまり聴かない年代というのはやはりある。きょうの歯医者をきっかけに、しばらくは初めの頃のビートルズを聴くことになりそうだ。 (11:37)