市町村合併の行方

●変わる“日本一”

 いわゆる“平成の大合併”で、全国地方自治体に関するさまざまなデータも書き換えられている。
 かつて日本で一番広い市といったら福島県いわき市というのが常識だった(面積:約1231平方キロ。以下、数値の「約」は省略する)。それが現在では、2003年の清水市合併によって静岡市が日本で一番広い市となっている(1374平方キロ。ただし境界未定地域があるようで、この数字はまだ参考値として扱われているらしい。余談だが、静岡市はこの4月に全国14番目の政令指定都市になる)。合併の嵐はまだまだつづき、市町村の面積順位も様変わりしていく。そもそものトップであったいわき市も、日本最大の市になった原因は1966年の5市9町村による大合併だった。
 静岡市は市としては最大面積を誇っているが、町村を合わせると全国で2番目。トップは松山千春鈴木宗男で有名な北海道足寄町十勝管内)で、面積は1408平方キロだ。このため足寄町では「日本一広いまち」などの看板を立ててアピールしている。
 この足寄町をめぐる状況が、大きく変わりつつある。2月1日、岐阜県高山市が周辺町村と合併し、新たに日本一の座をゲットするのだ。新しく誕生する高山市の面積は、なんと2179平方キロ。これがどれくらいの広さかというと、東京都(2187平方キロ)とほぼ同じなのである。デカイ。日本一小さな都道府県である香川県が1876平方キロ、2番目に小さな大阪府が1894平方キロだから、新・高山市はまさに都道府県レベルの面積規模を持つことになるわけだ。
 今後は夏に静岡県浜松市が周辺市町村と合併し、全国2位の1511平方キロになる予定。足寄町を上回る自治体が続々登場となるが、当の足寄町は「町村としては日本一の広さ」ということで「日本一広いまち」の看板は下ろさないらしい。まあ、それでいいんでないかい。他の町に抜かれるまでは(笑)。

●地域のつながりという視点

 一方では、岐阜県中津川市長野県山口村との県境を越えた“越境合併”が25日、官報の告示により正式に決定した(合併日は来月13日)。
 山口村は有名な馬籠宿があるところ。長野県に属してはいるが、地形的に岐阜県側に開けており、経済的にも中津川市坂下町といった岐阜県との交流が深い。中世までは美濃国(現在の岐阜県南部)に属していたという歴史的背景もある。
 県の合同庁舎までの距離も、長野県の木曽合同庁舎が車で50分かかるのに対し、岐阜県の恵那総合庁舎なら車で30分程度とのこと。JRの駅や消防署、病院など、どれをとっても岐阜県側の施設のほうが近い。こう考えると、住民のためを考えれば、長野県に残りつづけるよりも岐阜県編入してしまったほうがはるかにいいというわけだろう。
 このような越境合併の実現は46年ぶりとのこと*1。今回の“平成の大合併”では初めてのケースだ。日本にはほかにも越境合併を模索している自治体があるので、今後の動きに影響を与えるかもしれない。
 
 市町村が合併によって器だけがただでっかくなるのか、それとも住民サービスも合併前よりでっかくなるのか。さらに継続する“平成の大合併”や将来的な道州制導入の議論とも絡めて、注目したいところではある。 (2:03)

*1:1959年、栃木県菱村が群馬県桐生市に編入